さて、愉快な妄想はこの辺にしておいて、現実の世界の話をしよう。
10月2日、富山グラウジーズ対信州ブレイブウォリアーズ。
4Q残り37秒で2点を追う信州は、タイムアウトを要求しオフェンスをデザインした。
トップでボールを持つマクヘンリーのために、岡田侑大がオンボールスクリーンをかける。
ペイントに侵入しようとするマクヘンリーを岡田のマッチアップであった宇都直輝が阻止したが、その間に距離をとりフリーとなった岡田がパスを受け、逆転の3Pを沈めた。
このプレイ自体は実に合理的で、マクヘンリーの2点か岡田の3点のどちらかが期待できるものだ。
1分前の同じプレイではマクヘンリーがレイアップまで行っているため、次はおそらく富山のディフェンスが対応を見せるであろうことが予想される。
これにより、シュートチャンスはスクリーンをかけるプレイヤーにもたらされる可能性が高まるが、シューターに指名された岡田侑大はこの日の3Pがここまで7分の1と振るっていなかった。
それでも最後を託された。
試合中は終始一貫して的確な判断を見せていた。
特に彼が持つ秀逸なP&Rの技術と、チームが用いる戦術の親和性の高さからオフェンスで抜群の存在感を発揮し続けたが、3Pだけは苦しんだ。
4Q残り1分まで6分の0は心が折れてしまってもおかしくなかったと思う。
しかしこれは正直どうしようもない部分が大きい。
選手がゲームにおいて、より確率の高いシュートを選択することは可能だが、シュートが成功するか否かはコントロールできないからだ。
それでも、終了間際に試合の結果を左右する3Pシュートを2本放ち、2度続けて決めた。
これまでBリーグでプレーした3年のキャリアの中で通算して41%(石崎調べ)の3P成功率を誇る岡田侑大ならば、6本外した後に2本決めてくれる期待値は高かったと言えるだろう。
1つの数字だけを見てなにかを断定するのは危うい。
実際にはA崎もB崎も6本目のシュートが入る確率は40%であるはずで、「6本中何本入るか」のフレーミングにおいては先述した確率になるだけの話だ。
これを1シーズン通して見てみれば、6本連続で入ったりまたは外したりなんてことはわりとよくある現象に過ぎない。
誰が打つべきかを数学的に立証しようとするなら、より多様なデータと複雑な計算が必要になるだろう。
さらには、人間の精神状態がシュートの確率に及ぼす影響だって無視できない。
だが平均へ回帰する動きは統計的に普遍であり、試行数が増えれば増えるほどその傾向は強まる。
ならばそれに基づいた選択がもたらす可能性も、十分に考慮する余地があるのかもしれない。
いつか、「あいつが調子いいから打たせよう」に代わって、「あいつめちゃくちゃ外してるから最後は任せよう」の基準が優勢になる日が来たりするのだろうか。
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE