情報から学び、トライ&エラーを繰り返し、最適なものにたどり着く
「この分野を研究している方は世界中にたくさんいらっしゃって、論文も数多く発表されています。それらに目を通し、自分のやり方を探っていくことが必要。学んで、トライして、エラーもして、前に進んで行く感じですね。情報は常にアップデートされていますから、もしかすると5年前に最適だと思ったものが今はそうではなくなっている場合もある。5年前に自分が口にしたことと今言うことが違ってくることもある。それでも自分の中に核になるものがあり、しっかりとした経験値があればより良い選択をして選手に提供できるはずだと考えています。そして、もう1つ大事なのは身体とスキルはトレーニングおいてつながる部分がめちゃめちゃ多いということ。改善された身体をスキルに生かすという意味でもスキルコーチとのコミュニケーションは重要になります」
2年前に千葉のスキルディベロップメントコーチに就任した大村将基さんとはBリーグ開幕前からのつきあいだ。多田さんがパーソナルトレーナーとして大阪に拠点を置いていた1年間は大村さんが大阪エヴェッサのスキルコーチを務めていたときと重なる。「2人で話し合うことも多かったです。大村さんとの仕事はとてもやりやすかったですね」と、振り返る多田さんは同じ千葉のスタッフとなり、コミュニケーションを取ることも一気に増えた今も「やっぱり大村さんとの仕事はとてもやりやすい」そうだ。どんなに身体が強くなっても、上手に止まれるようになっても、技術につながらなければ意味がない。フィジカルトレーニングで身体が大きくなった原修太が、そこからディフェンダーとしての武器を手に入れ、さらにボールハンドリングの向上でプレーの幅を広げたのも「大村さんの力があってこそ」と多田さんは言う。もちろん、チームを支える “裏方” は自分たちだけではなく、それぞれの専門職の努力はみな同じだ。そこで多田さんはこう考える。「僕たち、いわゆる裏方の人間はそこをもっと評価してもらう必要があるんじゃないかと」
「ルール上で言えば、試合は選手とヘッドコーチとアシスタントコーチ、アスレティックトレーナー、マネージャーがいれば戦えます。つまりS&Cコーチやスキルコーチ、ビデオアナリストや栄養士なんかがいなくても試合はできるんです。でも、僕たちの仕事が必要ないのか?と言えばそれは違いますよね。強いチームを目指す上で絶対必要なものだと僕は思っています。それなら僕たちはもっと価値を見出してもらう努力をして、相応の評価してもらわなければならない。断っておきますが、ジェッツの場合、大野ヘッドコーチも選手たちも僕たちの仕事をよく理解して評価もしてくれています。でも、それだけじゃ足りない。クラブの上の人たち、たとえばGMとか社長とかにも自分たちの仕事の価値をもっと知ってもらう努力が必要だと思っています」