「トライ&エラーを積み重ねたことによって、オフェンスリバウンドをチームの強みにできたことが大きかったです。チャンピオンシップでは、セミファイナルの琉球ゴールデンキングスも、ファイナルの宇都宮ブレックスも、同じようにオフェンスリバウンドが強いチームです。相手の強みと自チームの強みが一致しているからこそ、自分たちの強みを相手より発揮することができれば、ポゼッションで優位になることを戦略として持つことができていました」
アナリストが持つ情報を聞くだけでも、試合の見方が変わってくる。「宇都宮とのファイナルは、スタッツから見てもストーリーがあったと感じています」と木村氏は言い、優勝の軌跡をデータや映像とともに振り返るコンテンツがあってもおもしろそうだ。
業界を発展させるアナリスト同士の競争
日本一のアナリストになることを目標に掲げ、志高く千葉でそのキャリアをスタートさせた木村氏。昨シーズンのリーグ制覇でその目標を叶えたと思いきや、競争相手となるアナリスト自体がまだ少なく、そこに価値を見出せなくなっていた。しかし、少しずつその地位が確立されはじめている今、「アナリスト同士が競争していくことが大事であることを、ようやく感じられるようになりました」と次のステップに進む。
今後へ向け、データを扱うアナリストは、チームのためにもさらなる活躍の場を広げていく必要性を木村氏は考えている。
「オリンピックが終わり、今後はスポーツ単体で生き残るのも難しくなっていくような危機感を感じています。アナリストとしてバスケと関わる中で、どう社会的意義を示していけるのかを考えていかなければなりません。例えば、スポンサー企業と提携を結んで一緒にデータ分析をしたり、ファンに向けて分析結果を見せて新しいコンテンツにしたり、それが社会的問題解決の一例になれば社会的意義が出てくるのかなと思っています。新しいアクションを起こさなければ、今後は生き残っていけないと強く感じています」
言い換えれば、それだけアナリスト業界は可能性がある。ファンに向けたコンテンツという話題が出たので、さらに楽しむためのデータの見方について指南していただいた。
「よくされる質問ですが、競技スポーツと見るスポーツに対して、まだ『これだ』と言える部分は気付けていないです。それぞれ独自に見ていくことが一番楽しめると、逆に感じます。とにかくいろんな見方や感じ方をすることで、それが足し算のように積み上がっていき、試合の中のストーリーが生まれてくると感じています。正直、アナリストの仕事もその一部分でしかないと思っています。あえて具体的に挙げるとすれば、シュート成功率、オフェンスリバウンド、ターンオーバー、フリースローの4ファクターを自分は大事にしています。それだけに限らず、いろんな視点で見ることがやっぱり一番楽しめます」
B1でも多くのチームがアナリストを迎え、木村氏ら第二世代が台頭してきたことで追い風が吹きはじめている。「今後は大学や高校にアナリスト学科やコースができて、そこから輩出された人が第三世代と自分の中では定義しています」とさらなる底上げに期待しつつ、開拓者となってその地位を引き上げていく。
千葉ジェッツ 木村和希ビデオアナリスト
アナリスト業界を邁進させる第二世代
前編 https://bbspirits.com/bleague/b21091801/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b21091901/
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE