オリンピックで感じたシュート力の差
この夏、勝久コーチは男子日本代表サポートコーチ兼通訳として、東京オリンピックを戦ってきた。日本が敗退したあとも足しげくさいたまスーパーアリーナへ通い、世界の真剣勝負を目の当たりにしてきた。最前線で吸収してきたことを、穂坂コーチも少しずつ還元してもらっている。
「ジェフリーさんが話していたのは、打開力であり、オフェンスで崩す部分です。オフェンスは24秒間で攻めなければならず、どんどん時間が経ってしまうと難しいシュートを選択しなければならない状況になってしまいます。そのためにも、一瞬一瞬のチャンスを見逃さずに突かなければならないという話を聞き、自分の中でオリンピックでの各国の試合を見返す中で、確かにそうだなと思いました」
穂坂コーチもオリンピックを通じて、様々な刺激を受けている。その中でひとつの答えにたどり着いたのが、シュート力の差だった。「もちろん、他にも身長差やフィジカルの違いなどいろんな違いがあり、それを言えばキリがありません。ただ、大きく分けて考えれば、シュート力の差に着目しました。結局は、シュートが入るかどうかで勝敗は左右されます。ディフェンスをいくらがんばっても、最終的にはシュートを決め切る個の力が必要です。今はそのシュート力を上げるために、様々な方面から分析して少しでも確率が上がるようにアプローチしています」という穂坂コーチの考えは納得である。
オリンピックでの日本のシュート成功率は41.6%、12チーム中11番目、平均得点は78.3点であり、こちらも下から3番目と精彩を欠いた。しかし、シュート試投数は平均73本であり、これは最多となるスロベニアの平均74.3本に次ぐ2番目、平均72.8本のアメリカよりも多い。失点を最小限に抑えるディフェンスも重要であり、欠かせない。だが、守っても次のオフェンスでシュートを決められなければ良い流れは生まれない。オリンピックでもオフェンスでは、ため息を漏らす場面が多かった。シュートチャンスを作れているからこそ、そこを決め切るシュート力が向上すれば、自ずと世界と対等に戦えるはずだ。東京ではオリンピアンを輩出することができなかった川崎だが、穂坂コーチの取り組み次第ではその勢力図は大きく変えられる。
現在36歳の穂坂コーチは、「バスケに限らずいろんな競技を、様々な視野で見るようにしています。選手にフォーカスされがちなオリンピックですが、裏側で支えるコーチたちにも注目していました」とコーチングについて貪欲に吸収していた。理想のコーチ像を聞けば、「心を動かすではないですが、ハートをつかむコーチに憧れます」。川崎でたくさんのことを学びながら、若きコーチはもう一度アシスタントコーチに戻ってチャレンジし続けている。
川崎ブレイブサンダース 穂坂健祐アシスタントコーチ
貴重なヘッドコーチ経験を糧とし、さらにキャリアを積み上げるチャレンジ
前編 https://bbspirits.com/bleague/b21083101/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b21090101/
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE