リーグ戦形式で戦い始めた大学時代から、笹倉には信念にも似たひとつの思いがある。
「長いシーズンを戦っていくうえで、たとえば1試合負けたときに『シーズンは長いから大丈夫』という感覚は絶対に良くないと思っているんです。1試合1試合が優勝に関わってくる試合なので、そこに向けて取り組む姿勢などは先輩方からも学びますし、僕自身としてもそれがプロとしての姿勢でなければいけないと思っているんです」
同門の先輩はオーストラリアで研鑽を積み、同級生は世界最高峰の舞台で2年目のシーズンを迎えようとしている。しかし今の笹倉はそこを見ない。まずは目の前の壁をひとつひとつクリアしていくだけだ。
「僕としてはまずポイントガードとしてやっていきたい。日本のトップレベルのポイントガードとマッチアップしたときに、どれだけ向かっていけるか。ただしそれは個人の技術で彼らを倒していくというのではなく、自分がチームを引っ張って、彼らのいるチームに勝ちたい。そのための準備を今、コツコツとしている段階です」
B1のチャンピオンチームから期限付きで移籍してきたからといって、彼はまだ何者でもない。B1はおろか、B2でも実績はほぼないと言っていい。そのことは他でもない彼が一番わかっている。
しかし一方で彼がB1のチャンピオンチームから見初められ、オファーを受けたのもまた事実である。成長次第ではチャンピオンチームの一員になれると信じられたからこそ、数ヶ月ではあったが、そこに名を連ねたのだ。
杜の都・仙台でプロとしての一歩を踏み出している。足りないところは多い。だが、そこでの一歩一歩がプロとしての血となり、肉となる。
笹倉怜寿のプロ生活は始まったばかりである。
文 三上太
写真 B.LEAGUE
画像 バスケットボールスピリッツ