「練習では基本的に成さんとのマッチアップが多いんですけど、学ぶというよりポイントガードって自分なりの何かを持っていることに気づいたんです。こだわりというか、自分だけの教科書みたいなものを持っているんだなと。そこを僕はまだ確立できていなくて、模索中です。たとえばこういうときにどう考えますか? どうしますか? っていうときに、それぞれが違うやり方を持っているわけですね。何かひとつの状況に対して、どうやるかを学ぶというより、実戦を通してポイントガードとして大事なこと、重要なことを気づいていきたいと思っています」
経験が少ない分、既存のポイントガードと同じことをやっても意味がない。
自身の長所である高さを押し出していけば、勝機を見出すことはできる。つまりは高さのミスマッチを生かしてゴールに迫り、ノーマークのチームメイトがいれば、ベストなパスを供給していく。
一方のディフェンスでは高さを生かすのではなく、小さいポイントガードに対しても積極的にプレッシャーをかけていく。195センチの上背に加えて、高いアスレティック能力を持っていることも、自他ともに認める船生の特長である。
開幕前の練習試合では一定の手応えを得た。
一方で課題も山積する。
中学生のときから見ている橋本竜馬(レバンガ北海道)や篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)のようにチームを鼓舞し続け、背中で語るリーダーシップはまだまだ遠い。
「練習中から手応えはあったんですけど、いざ、他のチームと対戦したときにチーム全体がうまく行かない時間帯とか、僕のせいでチームのリズムが悪くなる時間帯が多くあったんです。ヘッドコーチから『こうやるんだよ』って言われる前に、ポイントガードとしてスムーズにさせなければいけません。僕が何かをするわけじゃないけど、ベストな状況を提供してあげる。そこらへんをもう少しできるようにしたいですね。そのためにはちょっとした余裕が必要ですよね。余裕と判断……プレーしながらの判断は、練習と試合で違うところがありますから」
195センチのフォワードが、27歳になる年にポイントガードへとコンバートする。そんな例が過去の日本バスケット界にあっただろうか? 前代未聞かもしれない。船生は今、そんな挑戦を目の前にして、期待と不安が交錯する日々を送っていると認める。
それでも振り向くことはしない。
「西地区で優勝して、Bリーグ制覇もしたい。そのために僕が与えられている役割は重いと思っています。昨シーズンまで西地区でトップを走っていたチームが経験のないポインドガードを使おうとしているわけですから。だからまずは今いる選手やスタッフ、そしてキングスのファンに僕を取ってよかったな、僕とプレーできてよかったって感じさせることが一番だと思っています。でも、それができたときは優勝できるチームになるんじゃないかと思っています」
画面越しに見えた船生の表情からは決意が満ち溢れていた。
文 三上太
写真 B.LEAGUE
画像 バスケットボールスピリッツ