富山で過ごした2年間は不完全燃焼だった。
もちろんチームとしてはチャンピオンシップ(CS)に進むなど内容の濃いシーズンを送れていたが、個人としては納得のいく結果を残せなかった。
「今まで以上にバスケットに対するモチベーションが溢れているんです。このエネルギーを爆発させたいです」
船生誠也は琉球ゴールデンキングスのヘッドコーチ、藤田弘輝にそう告白した。
「じゃあ、ウチに来てくれないか」
船生と藤田が接近したのはこれが初めてではない。
3年前、名古屋ダイヤモンドドルフィンズに所属していた船生が移籍先を探しているとき、富山と同時に手を挙げたのが藤田だった。当時は三遠ネオフェニックスのヘッドコーチを務めていた。
しかしアイシンシーホース(現シーホース三河)から名古屋Dに移籍していた船生は、企業が母体ではないクラブを経験するのもいいんじゃないかと考えていた。社員ではない熱狂的なファンに支えられるクラブでプレーしてみたい。しかもこれまでアイシン、名古屋Dと渡ってきている。3チーム目もまた愛知県内のチームでいいんだろうか。そんな直感的な思いが、一度は船生と藤田のたもとを分けている。
あれから3年。船生は藤田のもとでプレーすることを決めた。
「今まで以上に求められる役割と責任が違うので、そこらへんはいいプレッシャーというか、今までにないくらいバスケットと向き合っています。体もそうだけど、心のほうも疲れていますが、それも幸せなことだと思っています」
今までとは違う役割 ── 船生は今シーズンからポイントガードに挑戦している。「まだ伸びているんです」という身長は今、195センチ。
「富山には191センチの宇都直輝というポイントガードがいますが、195センチの日本人ポイントガードはいないので、今、僕が目指しているところはそこなんです」
ミニバスの指導者をしている父の影響で小学3年生からバスケットを始めた。以来、ポイントガードの経験はケガ人が出たときにやった程度。それでもどこかで自分はポイントガードに向いているんじゃないかと思っていた。
「ゲーム全体を見たり、意外と気を遣ったりするほうなので向いているんだろうなと。もちろんこれまでいろんなポイントガードを見てきて、見れば見るほどすごく大変なポジションだな、ボールを運んで、プレーコールをするだけじゃないなってことも重々承知していますけど、挑戦してみたいという思いはあったんです」
ようやく巡ってきたチャンス。
逃す手はない。
しかし琉球には石崎巧をはじめ、並里成、岸本隆一といった歴戦のポイントガードがいる。