「高校生の足元まで詰めてくるディフェンスはやっぱり嫌ですね」富樫勇樹
新型コロナウィルス感染症の影響により、中高生の大会が軒並み中止となった。バスケの場合はウインターカップ開催の可能性は残っているが、3年間の集大成をぶつける機会がないまま、すでに引退を余儀なくされた選手たちも少なくはない。
トップアスリートやそのOB/OGたちなどが発起人となり、学生たちに手を差し伸べる活動を行っているのが一般社団法人『スポーツを止めるな』だ。その名の通り、コロナ禍で思いっきりスポーツができない状況下でもSNSやオンラインイベントを通じ、それぞれの競技を止めないアイディアを提供している。その一環として、思い出の試合映像にBリーグ選手が解説する「青春の宝」プロジェクトがスタートした。すでにラグビーで実施され、メディアを通してその存在を知る方も多いことだろう。
静岡の強豪同士である藤枝明誠高校vs飛龍高校の試合が、両校の選手や関係者を対象にオンライン上映された。素材となる試合映像はチームが撮影したものだが、実際の中継と同じようなパッケージで送り届ける。実況はおなじみ松本圭祐氏、解説には富樫勇樹選手(千葉ジェッツ)がサプライズで登場。「足腰が鍛えられているのはすごくいいこと」「フローターは技術として絶対に持っておかなければいけない」と自らの経験を踏まえながら、アドバイスを送る。
またはコート上の選手を自身に置き換え、「あのスピード感といい、やられている自分が想像できますよ」「高校生の足元まで詰めてくるディフェンスはやっぱり嫌ですね」と賞賛する。
8月12日より、同じようにプロ選手が解説する「青春の宝」プロジェクトの応募がはじまり、バスケットボールの締切は9月20日まで。10チームに厳選されるが、参加することに意義がある。
結果を考えずに動くことでチャンスが開け、成長できる体験談
『スポーツを止めるな』は野澤武史代表理事や廣瀬俊朗共同代表理事ら元ラグビー日本代表をはじめ、競技の垣根を越えたアスリートなどが賛同し、コロナ禍における学生たちを勇気づけ、支援する。バスケ界からは宮田諭選手兼GM(東京エクセレンス)に白羽の矢が立ち、その後、日本バスケットボール選手会会長の田口成浩選手(千葉ジェッツ)も名を連ねている。
「人生において一番バスケを止めなかったから」という宮田選手の推薦理由は共感できる。「僕自身が公立の高校で、誰も知らないところで一生懸命バスケしてきましたからね」と、今なお続く長い足跡をたどれば、けっして恵まれたプレー環境ではなかった。26歳の時に脱サラし、ハイレベルなアメリカでのプレー機会を求めて行動に移す。当時、NECの社員として経験と技術を身につけていた宮田選手は「バスケがダメでもSEとして稼いでいくことはできる。でも、バスケで挑戦できるチャンスは今しかない」と語っていたのを思い出す。