── 当然ですが、現役選手としてやっていく自信は十分あるということですね。
それはもちろんありますよ。体力面だけで言えば年齢は正直で、30歳を過ぎたあたりからリカバリー力が落ちてくる。疲れが取れるのに時間がかかるようになるというか。でも、バスケットは体力だけでやるわけではないので、自分はまだトップレベルのリーグでやれる自信は十分あります。ただ、一方で「自分ができると思っているからやる」「プレーしたいと思っているからやる」というのはちょっと違うんじゃないかなと考えるようになったのも事実です。そういうのはもう終わりでいいんじゃないかなあと。
── それはこれまでの自分自身を振り返って思うことですか?
そうですね。これまでの自分というのは、目の前にやりたいことがどんどん見つかって、それを全部やりたいと思っていたんですね。どんな未来が待っているのかわからないけど、挑戦することが楽しくてゴールの設定も考えることなく突き進んできたという感じです。でも、35歳になったとき、立ち止まって考えなきゃいけないなというところに差し掛かった気がしました。バスケット選手としてもそうだし、今携わっているいろいろなこともそうだし、「好きだからやってまーす!」という時期は過ぎたと思うんですよ。これから自分自身が進んでいく人生についてもう少し時間をかけて考えなきゃというところに来てるなというのがあります。だから、バスケットもただ自分が好きだから、やりたいから続けるっていうのではなくて、なんていうんでしょうね、求められているからとか、ここでプレーすることで社会的に影響を及ぼすことがあるとか、そういう自分なりに納得できる意義とかやり甲斐みたいなことが必要だし、大事だなと思うようになりました。
── そんなことを考えながら東京に戻って来たタイミングでアースフレンズ東京Zから話があったということですか?
まあ、そうですね。アースフレンズ東京Zがベテラン選手を欲しているというのを聞きました。で、加入するしないの話は置いといて、まずどれぐらい現実味のある話なのか、お互いにどういう考え方をしているのか一度お話をしてみましょうということで、代表取締役の山野(勝行)さんとお会いしたんですね。お互いじっくり話ができたと思うのですが、話の前提としてうちにはこれだけしか予算がないというのを聞いたんですよ(笑)
── 正直、年俸は大幅に下がる?
うーん、でも、まあ僕は最低年俸とか低い年俸なら0円でも変わらないと思ってて、お金のことは最優先ではありませんでした。それより自分にとって大事だったのはさっきも言ったようにバスケットをやる意義とか、どれだけ求められているかとか、そういうことですね。もし低いオファーであれば、自分がそれでもやる意義があるのかじっくり考えればいいと思ったので、即決しようとは思わなかったですね。山野さんのインタビュー記事は前に読んだことがあるんですが、掲げているビジョンが他のクラブと違ってちょっとおもしろいなと思っていました。大きな資本があるわけではない個人オーナーとして街クラブを立ち上げた人ですから、同じ個人オーナーとして頑張ってきた自分と共通したものを感じたんですね。その後もマメに連絡をいただきまして、話すたびに僕の選手としての価値を感じてくださって熱心に誘っていただきました。金額的にも十分なオファーをいただいたので、「そこまで求めていただけるのなら」と、わりとすぐに決断して、責任を持ってコミットしようと思いました。