東頭はそれを「シェアする文化」だという。ともすると日本は自分の得た情報を隠すことで優位性を保とうとしがちだ。シェアするとしても狭い範囲の仲間内だけ。しかし高いレベルの情報に触れ、それを多くの人がシェアできれば、それだけ日本全体のレベルが向上していくはずだと東頭は考えている。
「海外のコーチもそうやって情報を得てきたから、僕のような一介の日本のコーチでも真摯な態度で接すればきちんと教えてくれるんです。『ありがとう』と言うと、『なぜ、ありがとうなんて言うんだ? 俺もそうしてきたんだから当たり前だろう?』と。そういったシェアする文化を日本にも根付かせたいんです」
「GBNセミナー」を開こうと思ったのはコロナ禍だからではない。これまでも東頭は毎年のようにラングを日本に招き、クリニックをおこなってきた。そのためにはもちろん渡航費を含めて多くの費用がかかる。しかしコロナウィルスの世界的な流行でそれができなくなったとき、オンラインでミーティングやセミナーができるアプリの存在を知った。それを活用すれば講師が家から出ることなく、セミナーを開催できる。「無料でやってもいいよ」と言ってくれる。
世界的なコーチのセミナーが無料、もしくは手数料ほどの参加費でおこなわれることはけっしていいことではない。彼らが多くの経験から得た知識や知恵は、それほどにお金では計算できないほどの価値がある。それでも東頭を始め、多くのコーチがほぼ無料でそれを開催するのは、名前さえ知らない世界各国のコーチや選手たちとともにバスケットボールの価値をより高めたいと考えているからだ。
「GBNセミナー」がきっかけでもいい。クリニックのような現場に行けなくても、実績のあるコーチがさまざまな場所でセミナーなどをおこなっている。それが有料であったとしても、新しい情報を得ようと学びの姿勢を掻き立てることは、目の前のチーム、選手だけでなく、未来の日本を築くことにもつながる。たとえ新しい情報が得られなかったとしても、本当に大事なことが何なのか、改めて気づかされることもあるはずだ。
こんな時期だからこそ、これまで以上に学びをチカラに変えていきたい。
【Get better nowセミナー 第9回】
講師 ディビッド・ブラット(元クリーブランド・キャバリアーズヘッドコーチ)
日時等の詳細は https://coachtodo.com/seminar/get-better-now-zoom-seminor-09/
文 三上太
写真提供 東頭俊典、泉誠一、B.LEAGUE