シェアする文化を根付かせたい
むろん、来月で43歳になる東頭も昔からそうした意識を持っていたわけではない。コーチになりたてのころは「僕自身、視野がすごく狭かった」と認める。しかし男子日本代表のアシスタントコーチ兼通訳として代表活動に携わったことで意識が変わったという。
「日の丸を背負った経験があるからこそ、日本代表が勝てないことに対して、今も考え続けているし、それを次の世代の人たちに伝えていく義務が僕にはあるんです」
高校卒業後、アメリカの大学に進学した東頭はそこで得た英語力を駆使して、世界の名だたるコーチたちとの接触を果たしてきた。それが「GBNセミナー」を主催するきっかけを作ってくれたアドキンスであり、三菱電機(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)時代からの間柄であるアントニオ・ラング(現在はクリーブランド・キャバリアーズのトップアシスタントコーチ)であり、フィリピンの“ミスターバスケットボール”ジミー・アラパグ、イタリアのファブリチオ・フラテスら、セミナーに登壇してくれた人たちだ(もちろん、他にも多くのコーチたちとつながっている)。今週末(5月30日、31日の2日間)にはクリーブランド・キャバリアーズをNBAファイナルまで導いた経験があり、ユーロリーグを制した経験を持つデイビッド・ブラットのセミナーがおこなわれる。
ブラットこそ講師料を支払う形になるが、それ以外のコーチはほぼ無料。通訳を務める東頭も無給だ。セミナーで徴収される参加費はウェブ運営に携わっている人たちに支払われるだけだ。
「情報化の時代で、多くの若いコーチたちは勉強していると思います。でもまだまだ日本の情報に対するアクセスは世界のコーチたちに比べて遅れていると思うんです。そこには英語の壁もある。それもひとつの問題だと思います。でも情報がないことは自分の目の前にいる選手たちの可能性をつぶすことになります。それはコーチとして絶対に起こしてはいけないことだと思うんです。今は情報を取ってくることができる時代だし、世界のコーチも有益な情報を与えてくれます。実際に僕もさまざまなコーチからいろんな情報をもらっています。でも僕が指揮するチームでは使えないものもあります。だからといって、その情報を僕のところで止めていても仕方がない。どんどん出していって、必要な人に使ってもらいたいんです」