part3「ポイントガードはもっとも経験値が求められるポジション」より続く
苦しむチームを引っ張り上げるのはベテランの仕事
── では、今シーズンの新潟アルビレックスBBについてお聞きしたいと思います。2月17日第23節が終わった時点で新潟は13勝26敗、中地区4位と苦戦しています。この状況についてどのようにお考えですか?
五十嵐 今年はやっぱり厳しいですよね。僕はBリーグの初年度に新潟に移籍してきて今年で4年目になりますが、その中で最高の成績を残せたのが去年でした。大黒柱だったダバンテ(ガードナー)とは3年一緒にやってきて、だんだん信頼関係も出来上がって、なにも言わなくても意思の疎通ができるようになりました。そこに真介が入って来てくれたことで、それまで弱いと言われていたディフェンス力がアップした。口で言うのではなくて、背中でハードなディフェンスを見せることでみんなの意識が変わったんですね。おかげで過去の2年とはまったく違うチームになって、その結果、中地区優勝を勝ち取れることができました。今年はそこからダバンテが抜けて、覚悟はしていましたが、その穴は思ったより大きかったというのが実状です。
柏木 正直、チームとしてやるべきことができていないと感じています。ただやってるという感がすごくある。本当に勝ちたいと思っているのか?ということですね。オフェンスもディフェンスもチームでやるんだという初歩的なことができないとチームスポーツは勝てない。去年はそれができていただけにすごくギャップを感じています。
── チーム間で意思の疎通がうまくいっていないということですか?
柏木 そうですね。それがうまくいっているときは、当然、お互いすんなり動けますが、片方がわかっていないと、ワンテンポ遅いとか、あれ?ちょっと違うなということが起こります。するとプレーだけじゃなくてメンタル面でもズレが出てきちゃうんですね。
五十嵐 今、真介が言ったとおりで、去年は意思の疎通ができているか、できていないかなんて考えることもなかった、言い換えれば考える必要がなかったんです。ところが今年は違う。チームのシステムだったらこう動いてくれるだろうなあと思ってパスを出しても、あれ、いないとか。去年はそういうチームの決まり事について特に話し合わなくてもプレーの中で俺の仕事はここだな、俺の仕事はこれだなってしっかり役割分担できてそれを遂行できていたんですね。そのレベルが去年は高かったように思います。それが今年は正直ちょっとできていない。それは別にダバンテがいたから、抜けたからということじゃなくて、チームとして意識を高めていかなきゃいけないところだと感じています。
柏木 このままだと今シーズンは下に行っちゃう可能性もある。そういう危機感も持たないと。
五十嵐 これは個人的な思いですけど、今は上に行くことより入替戦をいかに回避するかについて考えています。下に行かないためには残り試合を全部勝つぐらいの気持ちで臨まないとダメだと思ってるし、そうすることでチームも変化していくはずです。さっきダバンテが抜けた穴は想像以上に大きかったと言いましたが、それを成績不振の言い訳にはできません。今いるメンバーで全力で戦うことだけを考えています。
柏木 僕は希望も持っていますよ。中地区は混戦状態なので上に行けるチャンスはまだあります。さっき「勝つためにはこういうことをやっていかなきゃならない」と仕向けていくのがポイントガードの仕事だと言いましたが、それは同時に僕たちベテランと呼ばれる選手の仕事だとも思っています。チームは良くも悪くも毎年変わります。それによってチームの戦力やスタイルも変わりますが、その中でそれぞれの持ち味を生かして戦っていかなければなりません。メンバーが変わっても「これをやらないと勝てないよ」ということはブレちゃいけない。ベテランとしてそれを常に発信していかねばと思っています。