てっきり流行語大賞を受賞しているものだと思っていた。しかし調べてみると、意外なことにトップテンにも、特別賞にも選ばれていない。“ビビビ婚”。1998年、大物女性歌手が再婚する際に明かした「ビビビッときた」から派生した言葉である。
しかしアルバルク東京の選手たちは今も「ビビビッとき」ているようだ。
1月26日におこなわれた富山グラウジーズとの第2戦。A東京は最大15点のリードを第2クォーターと第3クォーターで2回も作りながら、その後富山に2~4点の差まで何度となく詰め寄られてしまう。いつ追いつかれても、いつ追い越されてもおかしくないのだが、A東京はそのたびに水際で防いでいく。
富山が最後に詰め寄ったのは第4クォーターの残り2分6秒。ジョシュ・ペッパーズが2本連続でジャンプシュートを決めて62-66にした場面だ。A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチはタイムアウトを取り、オフェンスとディフェンスの両面で指示を与えるとともに、選手たちに休むよう伝えた。
「残り2分。まだひと山、ふた山あるから、まずは冷静に水分を摂って休むよう指示を出しました。そして休んだあと、タイムアウト明けにもう一度ディフェンスを締め直して入ってほしいと伝えたんです」
危機的状況にあっても休ませるという冷静さが、「ビビビッと」来させる引き金になったのだろう。ケビン・ジョーンズが3ポイントシュートを決めて7点差に押し返した直後、富山の前田悟がオフェンスリバウンドから掃き出したパスをA東京の安藤誓哉がスティール。そのままレイアップシュートを決めて9点差に突き放す。
さらに富山のタイムアウト明け、今度はA東京の田中大貴が富山の葛原大智にプレッシャーをかけてミスを誘うと、ルーズボール争いからA東京がスコア。11点差。残り時間は1分8秒。富山にそれをひっくり返すだけの力と時間は残されていなかった。
「自分でもすごく大きな2点だと思いました」
安藤はスティールからの得点をそう振り返り、チームが終盤に見せた集中力に関してはこう話す。
「どうやったらあんな集中力を出せるのか、口ではうまく説明できないんですけど、あそこでチーム全員が一気に勝負にかかったと、やっていて感じたんです」
ビビビじゃないか。
田中も終盤の集中力はチームの共通認識から出るものだと言い、その理由についてこう言及している。
「自分たちは日頃から誰一人手を抜かずに、そういうシチュエーションを想像しながら練習をしています。それが習慣になっているんです。試合でそういう状況になったから頑張るんじゃなくて、普段からそういう意識でやれていることが試合でも出ているんです」
田中と葛原のルーズボール争いにいち早く「ビビビッとき」て、ゴールへ走り出したのがA東京のジョーンズとミラン・マチュワンだったこともそれを証明している。
「ビビビ」で強さを示したA東京だが、元祖「ビビビ婚」の彼女は2年後、その結婚生活に破綻をきたしている。流行語大賞に選ばれなかったのは、そんな未来が見えていたからだろうか。A東京の「ビビビ」がそうならないことを祈るばかりだ。
文・写真 三上太