永吉クンに会ってきた。京都ハンナリーズの永吉佑也クンである。
今さら蒸し返すつもりはないのだが、永吉クンは2018年の夏に大きな過ちを犯し、1年間の公式戦出場停止の処分を受けた。その処分が昨年4月に解除され、晴れて今シーズンから再びBリーグのコートに立てている。
1月24日におこなわれた川崎ブレイブサンダース戦は、そんな永吉クンのフリースローが決勝点となって、チームの連勝を「7」に伸ばした。
「チームとして暗闇に入った時期もあったけど、今はチームとしてやることが明確になって、チャンピオンシップに向けて自分たちがどんなチームに仕上げていくかが見えてきました。しかも今日は金曜日でBリーグ唯一の試合。他のチームも見ていたと思うから、いいメッセージになったと思います」
永吉クンの鼻息も荒い。
コートではディフェンスとリバウンドで存在感を示し──決勝点となったフリースローもオフェンスリバウンドを取りに行ったことで得たものだ──、ベンチに戻れば誰よりもチームを盛り上げる。久々に見た永吉クンはやはり永吉クンのままだった。
もちろん内面は大きく変わった。いや、変わらないわけにはいかなかった。自分がしでかした過ちを悔い改めて、もう一度コートに立とうと思えば、そうならざるを得ない。本人も大きく変わることができたと認めている。
「すごく変われました。バスケットは一人でやれるものではなくて、みんなでやっているんです。ファンもいるし、ボランティアの方もいますし、運営スタッフの方もいます。試合に出ていない期間に僕はそうした方々といろんなことをしてきたんですよ。だからこそ一試合にかける思いがだいぶん強くなったし、だからこそ負けたらすごく悔しいし、勝ったら喜びたいんです」
試合終了のブザーが鳴った瞬間──結果的には直前にファウルが起こっていたため残り時間を1.3秒まで戻されるのだが──彼は両手を突き上げて、雄叫びを上げた。7連勝をしている選手とは思えない喜びぶりだったが、そこにはプレーできる幸せと、ファンへの感謝が目いっぱい込められていたのである。
「川崎は僕の古巣。その川崎ファンのみんなも温かく迎えてくれたから、来てくれた方のためにいいプレーをしよう、いい表情を見せようと思えたんです。40分間、コートの中でも外でもベンチでさえも楽しむことを心がけていました。その結果勝つこともできたわけだけど、僕が川崎を離れてからも頑張っているところを見せたかったので、それが一番よかったかな」
楽しそうにプレーをする永吉クンを見ていて、突然思いついた。彼は“ジーニー”に似ている。ディズニー映画の『アラジン』に出てくる、あの魔人のことだ。体が大きくて、陽気でハッピーなエンターテイナー。千年、魔法のランプに閉じ込められていたが(一年、コートに立つことを禁じられていたが)、アラジンに(チームメイトやスタッフ、ファンに)助けられて、地上に(コートに)出てきた。
そうしてジーニーはアラジンの3つの願いを叶えていくのだが、京都ファンの願いごとのひとつはチャンピオンシップへの出場だ。
さて京都の“ジーニー”永吉クン、“アラジン”の願いを叶えられるかな?
文・写真 三上太