ただ「合流して日が浅いので、まだまだ使える状態ではない」とパヴィチェヴィッチヘッドコーチは言う。特に津山と笹倉のポイントガード陣はA東京のシステムを把握しなければならず、時間が必要である。2mある平岩についても「ビッグマンとして外国籍選手と競い合う必要があり、今はまだプレータイムを稼げる状況にはありません」と指揮官は断言した。しかし、チームにはアレックス・カークやミラン・マチュワン、ケビン・ジョーンズ、そして竹内譲次というリーグ屈指のビッグマンが揃っており、練習中からトップレベルと競い合える環境にある。「勇気やタフさ、度胸はすでに持っており、これからスキルのレベルは確実に上がっていきます。彼がA東京を選んだのも、もっともっとスキルを磨いて、トップレベルの選手になりたいという理由でした」とその素質は認めているだけに、パヴィチェヴィッチヘッドコーチのプロのレベルへと導く手腕にも注目したい。
唯一、1月5日の千葉戦で10分間の出場機会を得たのが小酒部である。神奈川大学のエースであり、ファーストオプションとして起用され、オールラウンドにプレーできたからこそ目立つ存在でもあった。「プロのレベルでどこまで得点能力が通用するか、またクリエイトできるか」とパヴィチェヴィッチヘッドコーチも言うように未知数である。「運動能力や身体能力は素晴らしいものがあります。プロのレベルでも、大学時代と同じような形で彼の持ち味を生かしてもらいたいです」と期待しており、プロでどんなプレーを見せるのかが楽しみだ。
「今のBリーグで育成することは難しいです」大野篤史ヘッドコーチ
千葉ジェッツが特別指定選手を迎えたのは、今シーズンがはじめてである。大野篤史ヘッドコーチは、「今のBリーグで育成することは難しいです」と率直な意見を述べる。自身が現役時代の頃は、「企業が母体としてしっかり育成する期間がありました」。しかし、プロとなった今は「契約とか、チームが増加したことでの移籍が頻繁になっているので、コーチとして育成は非常に難しい状況です」と感じている。
育成には時間がかかるものだ。プロとしての技術やフィジカルはもちろんだが、判断力や理解力などバスケIQを高めなければならない。大野ヘッドコーチが求めるレベルに対し、瞬時に理解して行動に移すことが求められる。少しずつ成長させ、信頼関係を構築し、立派なプロ選手として育ち、スタッツを残しはじめると巣立ってしまうケースも少なくはない。それでも大野ヘッドコーチは、「自分と関わった選手が1年でも長くプレーを全うできるようにサポートしていければ良いと思っていますし、選手たちのキャリアがハッピーになってくれたら良いという思いで取り組んでいます」と育成に向き合っていた。