コーチの思考を伝える通訳兼任ポイントガードのメリット
Bリーグの前身であるJBLの2011-12シーズン、8勝(34敗)しか挙げられなかった東芝ブレイブサンダース(現川崎ブレイブサンダース)は最下位だった。しかし、とどろきアリーナへ取材に行けば、なぜか勝ち試合ばかりを見ていたのを思い出す。翻って、24勝4敗でリーグトップの勝率を誇っている今シーズンは、記録を更新していた連勝も16で止まり、敗れた試合の半分をとどろきアリーナで目の当たりにしている。その相手は、いずれも富山グラウジーズだった。
12月29日のレバンガ北海道戦で2度のテクニカルファウルを取られたドナルド・ベックヘッドコーチは、1月4日の川崎戦で出場停止処分を喰らっていた。60-83で敗れはしたが、「プレーに対するアプローチはそれほど悪くなかった」と高確率(2Pシュート53.6%/3Pシュート42.1%)で決めた川崎のシュート力の方を称えた。翌日、復帰した指揮官は「ディフェンス、オフェンスのエクスキューション(遂行力)、リバウンド」と3つのキーワードを挙げる。守っては川崎の3Pシュートを23.8%(5/21本)に抑え、攻めてはおもしろいようにシュートが決まり、フィールドゴール成功率は5割に伸びた。リバウンドも川崎の29本に対して35本と上回り、3つのキーワードを徹底した富山が88-56で圧勝した。
富山はポイントガードの宇都直輝が12月14日の島根スサノオマジック戦でケガ(左肩鎖関節亜脱臼:全治6〜8週間)をし、苦しい状況である。逆にケガから復帰した阿部友和が、思い切りの良いアタックでチームを引っ張り、代わって入る山口祐希もしっかりとゲームをコントロールできている。この山口を富山公式ツイッターで見かける方も多いことだろう。毎試合、ベックヘッドコーチと記者会見に同席する通訳兼任の選手なのである。
ヘッドコーチの思考を伝える役割であり、ポイントガードであればなおさらコート上でのパフォーマンスに良い影響を与えるのではないかと以前から感じていた。
「コーチミーティングにも僕は一緒に入りますので、コーチが考えていることやチームとして何をすべきかという点は他の選手よりも確かに理解している部分はあると思います」