セバスチャンは、同じく今シーズンからチームに加入したチャールズ・ジャクソンとともにチームの泥臭いところを黙々と担っている。彼らが加わったことでSR渋谷は安定した力を発揮できているのだろう。
むろん彼は昨シーズンまでのSR渋谷を知らない。成績や順位などはもちろんチェックしているだろうが、それでもチームがなぜ下位に低迷していたのか、詳しいことは知らないはずだ。当然、今シーズンの好調の理由を昨シーズンとの比較で話すこともできない。それでもセバスチャンは開幕から好調を維持している理由について、こう言及する。
「コーチや選手たちの仕事に取り組む姿勢だと思う。ボクが最初に日本に来たのは8月よりも少し前くらいだったと思うんだけど、そのときにこの体育館に来て、すでに合流していた日本人選手の自主練習を見ることができたんだ。その取り組み方が素晴らしかった。いいシューターもいるし、いいボールハンドラーもいる。ドライブでバスケットにアタックできる選手もいるし、ビッグマンは本当に堅実で、そこに伊佐(勉)ヘッドコーチというバスケットの知識に非常に長けた、自分たちが今何を正確にやらなければいけないかということを経験から理解できているヘッドコーチがいる。そのケミストリーの塊こそが今のような状況を作っているんだと思う」
アメリカ・ミシシッピ大学を卒業したセバスチャンはスペインの名門、レアル・マドリードでプロとしてのキャリアをスタートさせている。その後、同じスペインリーグの別のチームにレンタルされて2シーズンを戦ったが、3年目のシーズンを母国ではなく、アジアの島国、しかもプロリーグが誕生してまだ4年目の国を選んだ。その決断には“あのコーチ”の助言もあったと明かす。
「自分のキャリアを考えたときに海外でプレーをしたいと思っていたんだ。でもNBAは世界で最もタフなリーグだし、生き残ることがとても難しい。そう思っていたときにSR渋谷のスカウトに声を掛けてもらったんだ。そして契約する前に一度日本に来たんだけど、そのときの日本という国そのものの印象と、チームの印象が素晴らしかったのがこのチームでプレーしようと思った理由の1つ。そしてもう1つ、実は男子日本代表のフリオ・ラマスヘッドコーチは、彼がスペインでヘッドコーチをしていたときのエージェントがボクと同じだったんだ。その縁で彼と話す機会があって、日本についていろんな話をしたよ。Bリーグのこともそうだし、日本のバスケット界全体がいかに盛り上がりを見せているのかを聞くことができたので、それがもうひとつの、Bリーグでプレーする大きなきっかけになったかな」
美しい日本に惹かれ、SR渋谷のコーチやスタッフ、選手たちの取り組む姿勢に意気を感じ、さらに男子日本代表を率いるヘッドコーチの後押しもあって、Bリーガー、セバスチャン・サイズは誕生したのである。
サンロッカーズ渋谷 #2 セバスチャン・サイズ part2
「タフな戦いだからこそ充実した日々がある。」 へ続く
文 三上太
写真 安井麻実