明るい性格はオフコートでも周りに人を引き寄せる。「どの選手もスタッフもみんなとても親切。何か必要なことがあったらいつでも声をかけてねと言ってくれるので、最初に感じていた不安もすぐに消えました」。中でも心強かったのはニック・ファジーカスの存在だと言う。「まず言いたいのは、ニックがとてもすばらしい選手であること。高いバスケIQの持ち主で、シュートも巧いし、見事なパスも出せる。そして何より大変な努力家です。僕はよく彼の自主練を見ていますが、一切妥協することがありません。ミーティングのときも積極的に意見を言うし、それに伴う行動力もある。僕は彼のことをこのチームに欠かせないリーダーだと思っています」。ファジーカスは彼だけではなく、同じく新加入のジョーダン・ヒースにも事あるごとに声をかけ、プレーのことから生活面のことまで様々なアドバイスをしてくれるのだと言う。「ときには『あの店に行けばウルグアイの物を売っているかもしれないよ』という情報まで(笑)。川崎にニックのような選手がいたことは僕にとってすごくラッキーなことでした」
練習の合間には日本人選手たちともふざけ合う。「彼らは本当にフレンドリーでおもしろい人ばかり。シーズン中は自分の家族といるよりチームメイトといる時間の方が長いから、チームの雰囲気がいいのは幸せなことです」。休みの日には妻と彼が言うところの「まだちっちゃなベイビー」を伴って東京や横浜に出かける。ときには古いお寺や神社を訪ねることもあるらしい。感心したのは日本の交通機関だ。「電車もバスも時間に正確で、とても便利。ただ(路線の)種類がいっぱいあるので時々どれに乗ればいいのかわからなくなります。でも、大丈夫。周りの人に聞けば丁寧に教えてくれますから。ちょっと迷子になりそうになったときも必ず誰かが助けてくれる。ラマスさんが言っていたように日本は本当に安全で親切な国でした」
が、食事に関しては当初戸惑うことも少なくなかった。「1番驚いたのは夕食の時間が早いことです。ウルグアイやアルゼンチンでは夕方になるとまずサンドイッチやコーヒーで軽い食事をします。本当の夕食を取るのは夜の10時ぐらい。でも、日本ではその時間になると寝る準備を始める人もいますよね(笑)」。塩をふった牛肉を薪火で焼き、バーベキューのようにみんなで分け合って食べる『アサド』というウルグアイの名物料理がたまに恋しくなることもあるが、「日本の食べ物はおいしいから問題はありません。豚肉を揚げたもの(多分トンカツ)も気に入っているし、カレーライスも大好きです」と笑った。
彼自身がそうであったように、ウルグアイでは日本について知る人は少ない。「ウルグアイの家族や友だちも日本のことはよく知りませんが、日本でバスケットをすることはきっと人生のいい経験になるよと言って送り出してくれました。だから僕は日本に来てバスケットのキャリアを積むだけではなく、いろんな日本の文化に触れ、人間としても自分を磨きたい。それも僕の新しいチャレンジだと思っています」
part3「ここ(川崎)で求められることはなんでもやる」へ続く
文 松原貴実
写真 安井麻実