富山一筋の水戸に対し、これまで移籍話がなかったわけではない。「自分がこのままこのチームにいても、何も変わらないのではないかと思うこともありました。もちろん地元のチームだからこそ、ここでプレーしたい、貢献したいという思いは強いです。でも、地元だからいると思われるのは、僕の中では違いました」とフリーエージェント制度を行使し、他チームと交渉したこともある。でも、富山を離れることはなかった。
「残ったことで年俸がバンと上がったかと言えば、そうではないです。でも、お金以外の気持ちや誠意を見せていただいたので、やっぱり地元に残りたいと思って12年目になります」
そんな富山県は今、「バスケがメインの地域になっていますよね、完全に」とその追い風を水戸も感じている。富山県出身の八村塁(ワシントン・ウィザーズ)の活躍が連日報じられ、馬場雄大(テキサス・レジェンズ)もNBA傘下のGリーグでの挑戦がはじまった。日本一多くのNBA選手を輩出する都道府県として、一番近い存在にいる。
「彼らもそうですが、今の大学生にも富山出身の有望な選手がいますので、地元に戻ってグラウジーズでプレーしたいと思ってもらえるようなチームにしていかなければいけないと、逆に危機感がすごくあります」と水戸は先も見据えていた。34歳、次のキャリアを考えるにあたり、「引退後も地元で、バスケやグラウジーズに何らかの形で携わりたい」と考え、今後も富山とバスケをつなげる架け橋としての活躍が期待される。「本当にいつかは彼らが戻って来て、ここでプレーして欲しいですね」と願い、そのためにもやるべきことがある。
「まずは富山のプロチームが、しっかり結果を残さなければいけないという思いはもちろんあります」
富山グラウジーズ #9 水戸健史
富山とバスケをつなぐ架け橋
part1「就職」
part2「変化」
part3「地元」
文・写真 泉誠一