part2「変化」より続く
富山グラウジーズに富山出身の選手は水戸健史しかおらず、ファンとの距離も他の選手とは異なる。
「今日もありました。ジムに行ったら、僕は南砺市出身ですが『私の娘は南砺市に嫁ぎ、その子どもが福野の学校に行っている』と話しかけてくれた方がいました。『つい、親近感を覚えて声をかけてしまった』と言っていました」
地元でプレーし続けているからこそ共通の知り合いも多く、いろんなつながりがある。「声をかけていただく機会がBリーグになってすごく増えました。応援していますと言っていただけることが、すごくありがたいです」と12年目を迎えた今、ようやくプロらしさを実感している。
これまでもホームはもちろん、アウェーのベンチ裏を赤く染めるファンは多かった。5千人を集客するのも納得できる熱さを感じていたが、実際は「静か。僕も含めて、感情をあまり表に出さない人が多い」というのが富山の県民性らしい。水戸は不思議に思うことがある。
「なぜかグラウジーズの会場では富山県民らしさを忘れて、ワァーと感情を出しています。その姿にいつもスゴいなぁ、そんな熱さが富山県民にもあったのかと感心しています。でも、僕は地元の人間なので、それがすごくうれしいです」
「お祭り好き」という県民性とも相通じる部分があると、水戸はさらに分析する。「グラウジーズの試合もひとつのお祭りとして来てくださっているのかもしれません。本来は静かな県民性にも関わらず、熱さを持って会場に来てくださるブースターに対して、がっかりさせたくない。だからこそ、常に全力でプレーすることはこの12年間変わらぬ目標です」という水戸もまた、その県民性とは異なる姿をコート上で見せてきた。