チームとしては、今年も安藤にシュートを打たせていくスタンスで変わらないと梶山も認める。取材当日の練習でも安藤がボールを触っていない時間帯が続くと、梶山はポイントガードを呼んで「周人がボールを触っていないよ」と伝える徹底ぶりだった。であれば、安藤自身もそれに応えるべく、これからいかに得点や3ポイントシュートの成功率を上げていくか。昨年は3ポイントシュートの試投数こそリーグ2位だったが(404本)、成功数はリーグ1位の成績(165本)を残している。それらの成績を厳しいマークのなかでいかに伸ばしていくか。本人が「エース」だと思っていないとしても、やはり周りに集まってきた人たちが安藤の持つ魅力に惹かれ、彼を「エース」へと掲げていくのはこれまでの歩みを振り返っても避けられそうにない。あとは本人の自覚、意識次第だろう。
名古屋Dには張本天傑を筆頭に笹山貴哉、中東泰斗らチームを引っ張るリーダーたちはいる。経験豊富なジャスティン・バーレル、ヒルトン・アームストロングらもいる。4シーズン目の安藤はまだまだチームを引っ張っていく立場にないのかもしれない。それでも徐々にではあるが、安藤のなかに自分がやらなければいけないという責任も少しずつ芽生えているようだ。
「僕はチームに対しても何も言うことがなくて、むしろ好き勝手にやらせてもらえていると感じます。そのことに感謝を忘れないでプレーしなければいけないし、困ったことがあれば先輩たちが気遣ってくれて、僕は支えられている立場なんです。だから試合では僕が先輩たちの手助けができたらいいかなと思っています」
名古屋Dには年齢的に安藤よりも下の選手はいるが、彼は名古屋Dの“末弟”といっていい。末弟が痛感した世界の壁。
「僕くらいのサイズ(190センチ)でも小さいのが当たり前の世界。日本人を相手にしているプレーと、ワールドカップで世界を相手にプレーをするのとではまるで違いました。今までどおりのプレーをしていたら活躍できないし、点も取れないし、ボールすらもらえない。そんなことが多々あったので、これが本当に世界の壁……アジアは何度か経験していますけど、これが世界の壁なんだなと痛感しました」
安藤がB.LEAGUEを通じてその壁を乗り越えようと努力を続ければ、年上のチームメイトたちもまた彼をサポートし、一方で彼に引っ張られてもいく。つまりフランチャイズプレーヤーとなりうる“末弟”安藤のステップアップこそが、チームを高みに導くカギのひとつというわけである。
歓喜の瞬間を目指して ── 安藤の新たな夢はまだ始まったばかりである。
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ #9 安藤周人
動き出した新たな夢 ~名古屋ダイヤモンドドルフィンズとともに~
part1、part2、part3
文 三上太
写真 沼田侑悟