振り返ればBリーグ元年となる3シーズン前、そのまま栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)に残り、B1で活躍するとともに優勝メンバーの一員になれたはずだ。しかし地元に戻り、B3のライジングゼファー福岡へ移籍。「人がやらないことが好き。でも、相手から求められなければ力を発揮できないタイプ。そういう意味ではプロ選手には向いていないかもしれませんね」という小林は、生まれ育った福岡のプロクラブのためにチャレンジし、1年ごとに昇格を果たしていく。たった2年でB1へ引き上げる原動力となった。「B3の福岡ではB1昇格を求められていたからこそ、がんばることができました」というのと同じく、茨城でも昇格請負人としての期待は大きい。
「自分の中でもいろいろ考えます。福岡の3年間は本当にきつかったです。昇格できたからまだ良かったですが、もし一度でも昇格できていなかったら地獄だったな、と本当に思います。精神的にもきつかったですし、もう二度とやりたくないと思いました。そのままB1クラブに移籍することを普通ならば考えますよね」
もちろんB1クラブからのオファーもあったが、「信頼できる山谷(拓志)社長がずっと熱く声をかけてくれて、この人たちのためならば自分のことを犠牲にしてでもがんばれると思いました。それが一番大きかったですね」と、今回も普通の選択はしなかった。
「ベテランと言われる立場になり、どうやってこのチームを昇格させるか。これまで福岡ではどういうチームが昇格し、逆に降格するかを嫌でも目の当たりにしてきました。本当に良いチームはフロントのためにがんばろうと思うんです。フロントも選手のために犠牲を払おうと思ってくれました。それが福岡にはありました。会社の経営が悪化したときも、『俺たちが負けたらもうこのチームが終わってしまう。フロントのために必死にがんばろう』という雰囲気を作ることができ、それがB1への近道でもあります。そこをうまく伝えていきたいですが、そこが一番難しいことです。その雰囲気を作ることが茨城に来た最大の責任でもあり、恩返しにもなると思ってがんばります」
茨城ロボッツは2シーズン前、中地区2位、全体でも5位となり、B2プレーオフへあと一歩届かなかった。戦力を補強し、期待された昨シーズンだったが、東地区3位、全体7位と後退している。「茨城をB1に上げる!これまでブースターも悔しい思いをしてきたので、『今年こそ』という思いは強く持っています」と有言実行で臨む新シーズンに期待したい。
part3へ続く「オリンピックに出ることが決まっているからこそ、メダルを獲れるかに焦点をあてなければいけない」
文 泉誠一
写真 吉田宗彦