part1より続く
子どもたちの憧れであり、地域に応援される選手育成
Bリーグはレギュラーシーズン60試合、チャンピオンシップを含めれば10月から翌年5月までかかる長丁場だ。そのため、「学生の試合をほぼ見に行けませんでした」というのが、ヘッドコーチがチーム編成を兼任するクラブの現状である。関東大学リーグ戦は9月から行われているが、開幕直前のために時間を作るのは容易ではない。昨年のインカレやウインターカップ時には、水曜ゲームがあったことで実際に見る機会を逸してきた。しかし今シーズンから「スカウトは僕が行けるようになるので、いろんな選手の情報が入ってくるようにしたい」という北GMは、若き逸材との出会いを楽しみにしている。
これまでも川崎はルーキーを獲り、育成にも力を入れているクラブだ。今シーズンは即戦力を加入させたが、昨シーズンは林翔太郎と青木保憲のルーキーたちにプレータイムを与えて、経験を積ませてきた。
「若い選手の勢いやフレッシュさがチームには必要だと僕は思っています。今シーズンは、優勝するためにどうするかを第一に考えたチーム編成ですが、その中でも有望なフランチャイズプレーヤーになり得る選手を見極めながら、クラブにとって何が一番良い選択かを考えていきたいです」
60試合あるレギュラーシーズンの中で、若い選手にプレータイムを与えながら経験を積ませて育成するのが最善策である。試合毎に結果を求められるヘッドコーチにとっては難しい選択だが、中長期ビジョンを考えるGMになったからこそ、思い切った起用を現場に促すこともできるのではないか。
「ここはヘッドコーチがどう思うかであり、それに対する理由をこちら側にどう共有してくれるかだと思います。もちろん勝利することがファンのためには一番です。でも、長いシーズンゆえにケガがつきものですから、選手起用は考えなければならない部分です。ただし、ブレてはいけないのは『BE BRAVE』というアイデンティティがあり、誰が出ても川崎のスタイルを表現できるかどうか。勝ちにつながることが一番大事ですが、アイデンティティをしっかり表現できるのであれば、その選択も良いと思います」
北GMは基本的に「育成がしたい」タイプと言う。「現状、学生に即戦力がいないかと言えば、いるとは思います。その選手を獲得して試合に出すことが一番です。若い選手は当然ミスをするものです。そこをどこまで許容しながら、優勝争いに食い込んでいけるかという考えもあります」が、Bリーグの現状もある。「プロ化したことで、優勝することにすごくフォーカスされています。そのためにどうするかを考えたときに、やはり即戦力を獲得する考えになってしまうのだと思います」。続けて、北GMは自問自答するように、「特別指定……」とつぶやいた。言葉を選びながら、持論を説いていく。