厳しさのなかで自分の色を出す
入団3年目(アーリーエントリーを含めると4年目)となるザックにも変化が訪れた。これまではパワーフォワードとしてプレーしていたが、今シーズンからスモールフォワード(3番)としてプレーすることになったのだ。当初は戸惑いもあったし、練習をすれば菊地祥平や田中大貴らにいいようにやられた。しかしそれがザックにとっては楽しいときでもあると認める。
「まだ全然慣れていないところはあるけど、高いレベルでやっているおかげで、新しいポジションに慣れるのは他のチームにいるより早いんじゃないかなって思います。ルカもけっして好き勝手にはやらせてくれないけど、いろんな挑戦はさせてくれます。初めて3番をやるにも関わらず、ピック&ロールを使っていいと言われるし、たとえオフェンスでミスをしても僕の良さであるディフェンスのアグレッシブさと、インテンシティー(激しさ)をしっかり出せば、オフェンスについてはある程度許してくれるので」
チームの根幹となるディフェンスにおいては「半歩のズレ」さえ許さない一方で、個々のオフェンスについては、その許容範囲を広げることで選手たちの才能を表に引き出し、それを結果に結びつけている。
それでも個人としても、チームとしても、まだまだ安定感に欠けているとザックは言う。それがリーグの終盤戦からチャンピオンシップにかけての課題であると。
「それとチームに関しては、まだどこかでルカを意識しているところがあると思うんです。特にガードが『次のコールは何にしよう?』と意識しているので、先日選手同士で話し合って『コートでプレーしているのは俺たちだから、何が一番いいかもわかっているはず。もっと自分たちを信じよう』ということになったんです。ルカの厳しさの中で、もっとのびのびとやることが大事なのかなと」
パヴィチェヴィッチヘッドコーチの厳しさは、コート上で繰り広げられる勝負の厳しさにも通じる。だからこそ選手たちが自らを律し、そのなかで個々の持つタレント、才能をより解放できれば、アルバルク東京は初年度叶えられなかった目標を達成することができるだろう。
Sky is the limit ── ザックが昔から好きな、いわば座右の銘である。
「人間に不可能はないって意味です。自分に限界を決めたらそこまでだと思っているし、自分が本当に望めば叶わないものはないと思っています。自分を信じてやるだけやれば結果はついてくると信じています」
Bリーグの2代目王者が決まる5月、ザックの頭上に広がる空は何色だろうか──。
文 三上太
写真 吉田宗彦