ルーカスの持ち味はディフェンスやリバウンドといった“ダーティーワーク”、チームを下支えするプレーだ。
インタビューから5日後、ホーム開幕戦で新潟アルビレックスBBと対戦し、ルーカスはダバンテ・ガードナーとマッチアップしている。身長では5センチ勝るものの、ガードナーは132キロという巨体を生かしたパワープレーと、3ポイントシュートを沈める硬軟を合わせ持ったプレーヤーだ。
それでもルーカスはフィジカルコンタクトを厭わず、ガードナーの突進を文字どおり体で止めていった。やられてしまうこともあったが、それでもルーカスはハードなディフェンスをやめず、リバウンドに飛び込み続けた。すべてはチームの勝利のため、である。
「華麗なプレーは楽しいと思うよ。でもそれ以外のダーティーワークも“For the team”だし、それをボクは福井で最初に教わったんだ。だからカンザス大学に進んでもそれをやり続けようと思ったし、アルバルク東京でもそれをやっていこうと思っている」
日本で自らのバスケットの原点を見出したルーカスは、だからこそ日本でプレーする道を選んだのである。
成長を続けることが未来の扉を開けていく
もちろんルーカスがプロになるまで成長したのは、バスケットの本場・アメリカで揉まれた経験があってこそだ。
「アメリカでは逆境に陥ったときにどう対応するかを学んできた。いいときもあれば、悪いときもある。バスケットは流れのあるスポーツだからね。さっきも言ったけど、僕はプロとしてはまだまだ若い。だからアメリカで学んだことも日本のプロの世界で身につけていきたいと思っている。それはけっしてスプリント(短距離走)ではなく、マラソンのような長いスパンで見て、そうなりたいね」
「経験のスポーツ」と言われるバスケットにあって、若さは弱点になりうる。しかし一方で、若さは勢いをもたらす武器にもなりうる。デメリットはメリットを内包し、メリットもまたデメリットを内包するというわけだ。
ただ、その若さがもたらす勢いは選手の急激な成長、いわゆる「大化け」へとつなげることもある。もちろん長い目で見た可能性を秘めていることは言うまでもない。
ランデン・ルーカス、24歳。彼もまた若い選手である。
文 三上太
写真 吉田宗彦