※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2017年4月末発行vol.8からの転載
マネージャーの二澤卓馬が、体育館の2階に併設されているミーティングルームに入ってきた。
「今、チーム練習は終わったんですけど、本人が個人練習をしたいと言っています。もう少し待っていただけますか?」
ミーティングルームを出て、観覧エリアから階下のコートを眺めると“彼”が個人練習に励んでいる。7つのスポットからのシューティングに始まり、ペイントエリア近辺のシューティング、ポストムーブからのシューティング、締めはフリースローだ。“彼”――ニック・ファジーカスは、「久々だ」と言う連続50本のそれを沈めて、その日の個人練習を終えた。
平均得点ランキングで首位を独走するファジーカスの、得点力の原点はこの個人練習にある。
「できるだけハードなトレーニングをすれば、その分、試合では楽に感じることができます。ボクは常に確率のよいシュートを打つことを意識してプレーしているので、それが結果につながっているのだと思います」
210センチのセンターであるファジーカスは、得点の大半をインサイドプレーであげている。しかし一方で、彼がチームで3番目の試投数(127本)を誇る“3ポイントシューター”であることはあまり知られていない。しかも成功率44.1%は、試投総数がリーグの基準に達していないためランキング入りしていないが、1位である石井講祐(千葉ジェッツ)の42.5%を上回っている。
「ボクは元々ガードで、日本でいう中学3年、アメリカなら高校1年まで身長が6フィート2インチ(188センチ)で、3ポイントシュートも打っていたんです。ボクに3ポイントシュートを打たせるための、スタッガードスクリーンを使ったセットプレーもあったほどです」
高校2年の夏、たったのひと夏で6フィート2インチ(188センチ)から6フィート10インチ(208センチ)に急成長したが、それでもその年はガード、もしくはフォワードとしてプレーを続けている。センターにコンバートされたのは高校3年になってからだ。
今ではインサイドプレーのほうが得意だと言うが、それでも210センチの上背で3ポイントシュートが打てることは〝武器〟だと認める。
「ボクは3ポイントシュートも確率よく決めているので、ディフェンスがインサイドプレーだけを守ればいいといった、1つの守備だけに集中できていないと思っています。3ポイントシュートを打てるようになれば、いろんなことができるようになるんです」