※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2018年7月末発行vol.23からの転載
ぶっちゃけると(笑)、「マーク・トラソリーニにも何か賞を与えるべきだ」という弊誌アワード選考委員会の声から生まれたのが、ベストインパクト賞である。シーズン前は、最も過酷な東地区において“お荷物”となるという声も多かった。そのレバンガ北海道の救世主となったトラソリーニは、大きなインパクトを残してくれた。
結果こそ東地区最下位の6位に終わった北海道だが、4月を過ぎた時点でもチャンピオンシップへの望みをつないでいたのは大きな進歩である。26勝34敗、たった3勝だが昨シーズンの戦績より上乗せできた。優勝したアルバルク東京戦は、3勝3敗と互角の戦いだったことも自信になっていることだろう。2チームがB2へ降格した昨シーズンとは打って変わり、6チーム中4チームがチャンピオンシップに進んだ激戦区だった。その中でも置いて行かれることなく勝ち星を得て、B1に残留できたことは大きな前進と言える。
北海道は今シーズンを迎えるにあたり、Bリーグが導入している様々な国のリーグや選手の情報が盛り込まれた分析ツール“Synergy”を活用し、新戦力獲得を行っていた。MLBアスレチックスがセイバーメトリクスによってリクルートする裏側を描いた書籍『マネーボール』のように、ごまんといる選手たちのスタッツと映像を、目を皿にして探しまくった。スタッフ陣の努力の結晶がマーク・トラソリーニである。
平均19点はリーグ3位。シーズン終盤の千葉ジェッツ戦では42得点、トラソリーニにとってラストゲームとなったサンロッカーズ渋谷戦も34点を挙げ、大きなインパクトを残した。スティール1.5本はリーグ2位、ブロック1.3本は同4位と攻守に渡って活躍。しかし、目立ちはじめると他のチームに引き抜かれてしまわないかという懸念を抱く。サラリーキャップも移籍金も発生しないBリーグにおいて、金満クラブが一本釣りすることは至って簡単なのだ。
前年比133.8%増の集客を誇る北海道は、これまでとは違う行動に打って出た。チャンピオンシップ真っ只中の5月14日、早々に来シーズンへ向けてトラソリーニとの契約を締結する。攻めの交渉はクラブ経営が上向いている証拠でもある。「妻も私もこの場所が大好きです」と、カナダ出身のトラソリーニが雪国に戻ってくることもまた、大きなインパクトを与えてくれた。
文・写真 泉誠一