自信を失いそうになったことは数知れない。目標としている東京オリンピックに出られるのか不安に押しつぶされそうになったこともある。そんなときに思うのはこれまで思い描いていた目標を達成してきた日々だ。U18日本代表でアジアを勝ち抜き、U19日本代表では世界と互角に戦うことができた。そうした自信の数々が今のアヴィを支えている。
「実際に日本代表の合宿に参加したときも、もちろん課題のほうが多いんですけど、ほかのビッグマンに負けているとは思わないんです。やりあえているので、そういう意味で自信をなくしてはいけないと思うんですよね。正直焦っている部分もありますが、落ち着いて、自信をもってやっていこうという感じですかね」
わずかでも成長を感じることができれば、また前を向くことができる。悔しい表情こそあれ、そこに暗さがないのはアヴィのそうした前向きさによる。
理想に一番近いのは元NBAプレーヤーのティム・ダンカンだという。サイズこそ違うが、身体能力を生かして他を圧倒するタイプではなく、堅実に、スマートにプレーを選択していくスタイルをアヴィは目指している。
「自分としては得点を取るだとか、華やかなプレーをするタイプではないので、泥臭く、縁の下の力持ちとしてリバウンドやディフェンス、スクリーンをきちんとかけるなど、そうしたところを徹底して、完璧にするのが目標です。得点を取れるとしたらピック&ロールですよね。特にアルバルクはパッサーがうまいので、ちゃんとしたピックをかけて、ロールをしたらパスをくれる。そうした得点シーンはあるんだろうけど、でもそこはあまり気にせず、基本的にはリバウンドを取って、ディフェンスをしっかりして、ルーズボールに飛び込むなど、泥臭いところで頑張ることが自分としては合っていると思っています」
派手な点取り屋が5人いても、そのチームは勝てない。泥にまみれるプレーヤーがいてこそ、点取り屋はその力をより発揮できる。日本のバスケット界は今、渡邊雄太や八村塁という稀代のスーパースターが2人同時に出てきている。しかし彼ら2人の力だけでは勝てない。泥にまみれるプレーヤーがいてこそ、彼らの輝きはより増していく。
アヴィは今年のNBAドラフトにかかるであろうと言われている八村についてこう言っている。
「追いかける背中があるというのは大きいですよね」
今はまだ先頭集団に遠く及ばないが、日本が誇る若きビッグマンは自信と葛藤をないまぜにしながら、後方からでも日本の屋台骨を支える選手になろうとしている。もちろん2020年への渇望を抱いたまま――。
part1【動き出した夢】
part2【NCAAからB.LEAGUEへ】
文 三上太
写真 吉田宗彦