── 二人とも大学を経て、プロという道を選びました
渡邊 それはもう一番ええ道を選んだなって思っています。小野(秀二ヘッドコーチ)さんの下でポイントガードをやらせてもらって、バスケット的にも自分の中ですごく財産になっていますし、人間的にも成長できていると感じます。僕は大学4年生のときにインカレに出場できなかったんです。3年生のときは出場できて、そのメンバーがほとんど残っていたにも関わらず、出場できなかった。あのときはすごく悔しかった。よく「負けても、そのあと何か得るものがある」って言いますけど、そのときは「何言うてんねん。ただ悔しいだけやないか。そんなこと言う割に代償があまりにも大きすぎるやろ」と。ほかの大学はインカレに行って、もちろん柏倉のいた青山学院大も出ていて、「俺には何も残ってないわ」と。でも東京Zに入って、そのときの自分に何が足りなかったかに気付いたんです。一言で言えばメンタルの弱さ、人間的な甘さですよね。もちろん僕の人間性がよかったらインカレに出場できたかどうかはわかりません。でもこのチームでそれに気づいたんです。それこそが東京Zに入団することを決めた理由の1つでもあるんです。このままずっと関西にいても成長できないんじゃないか、だったら自分のことを誰も知らない東京に出ていって、プレー的にもそうですが、人間的にも認めてもらえる場所でプロ生活を始めようと入団を決めました。
柏倉 人間的な成長というのは、自分も考えました。将来指導者になりたいので、バスケットを通じて技術的なことはもちろんですけど、人間的にしっかりしていないと教えられませんから。そういう面でもしっかり成長していきたいと思います。
渡邊 そうやな。昨年、僕もアーリーエントリーで入って、でも即スタメンというわけにはいかず、ベンチにいることが多くて、それはそれで悔しい思いをしていたんです。でもそのときに大学時代と同じ意識でいたら、あのときと一緒やって思ったんです。バスケットが自分自身にすごく向き合わせてくれました。そういう人間的なところ――もちろんまだまだなところが多いですけど、4年生のときよりは改善できたところがあるなと気付かせてもらいました。それを含めて、今、すごく楽しいし、この道を選んでよかったなと思います。
── 今後チームがさらにステップアップするために、それぞれに何が必要になりますか?
渡邊 僕は今、得点ランキングに入っていますが、それがそのまま自分の実力だとは思っていません。むしろ数字以外の部分がガードとして一番必要だと思っています。その感触はリーグの前半戦より持てているので、それをもっと確実なものにしていきたいです。もちろん長いシーズン、自分にずっと厳しくあり続けることは難しいと思いますが、あと28試合しかないので、B1に上がるためにもチーム全員で厳しくやっていきたいと思います。ただ肩に力を入れすぎたらやっていけないので、抜くべきところは抜いて、やっていきたいですね。
柏倉 自分もB1に上がりたいと思っていますが、現時点でB1のガード陣と自分を比べてみると、相当な差があります。だからまずは東京Zというチームで先輩方からしっかり学んで、吸収したいと思います。もちろん自分自身が努力しなければいけないところも多くあるので、ひたむきにやるしかありません。あとは新人としてチームに活気を与えるという意味でも、練習から一番大きな声を出して、存在感を出していきたいと思います。試合に出たら、チームの流れを変えられるような選手になれるよう、練習中から意識して取り組んでいきたいです。
渡邊 今の話を聞いて「初心忘れるべからず」だなって思いました。残り28試合、僕も昨年アーリーで入ってきたときのような気持ちで、もちろん責任感は今シーズン培ったものを持って、チームの目標に向かって思い切ってプレーしたいと思います。
文 三上太
写真 安井麻実