いよいよ5月12日よりB.LEAGUE 2017-18 チャンピオンシップがスタートした。各地で行われたクォーターファイナル(3戦2先勝方式)はいずれも白熱戦を期待されたが、中でも注目されたのは千葉ジェッツふなばしと川崎ブレイブサンダースの一戦だろう。激戦の東地区で優勝した(全体2位)千葉に対し、川崎はワイルドカード(全体7位)での出場になったが、レギュラーシーズンにおける対戦成績は3勝3敗。直近の試合(5月2日)では102-90で川崎が勝利している。また、川崎にとって右足のケガで戦列を離れていた篠山竜青が復帰し、大黒柱のニック・ファジーカスが帰化選手登録になったことも明るい材料の1つとなるはずだ。これらのことからも『最後まで予断を許さぬタフなゲームになることは必至』というのが大方の予想だった。
ところが、蓋を開けたゲームはその予想に反し、終始主導権を握った千葉が川崎を圧倒する展開となる。試合後、川崎の北卓也ヘッドコーチ、篠山竜青、辻直人が揃って口にした「出だしが全てだった」という言葉が示すとおり、立ち上がりから続けてイージーシュートを落とした川崎は早々に千葉の勢いに飲みこまれた。開始直後に得たフリースローを篠山が1本沈めるが、その後の6分間はノーゴール。ファジーカスのゴール下シュートがやっと決まって得点板の数字が動いたのは残り3分17秒だった。
「出だしから追いかける展開になったことで千葉さんのペースになってしまったことは間違いありません。シュートが入らないのでだんだんあわててしまって、すぐにシュートを打ってしまい、それが落ちて走られるという負けパターンに陥ってしまった。我慢すべきところで我慢ができませんでした」(北ヘッドコーチ)
波に乗ったときの破壊力はリーグNo1とも言われる千葉は焦る川崎を尻目に富樫勇樹やギャビン・エドワーズの連続3ポイントシュートでリードを広げて行く。2Qには西村文男のブロックショットまで飛び出し、大応援団の歓声を味方に付けると前半を49-27の大量リードで折り返した。後半に入っても千葉の勢いは衰えず、アキ・チェンバース、富樫勇樹の3ポイントシュートが決まった7分には64-34と30点差がつく。これに対し川崎はファウルが混んだ千葉からフリースローを得て何とかつないでいくが、エドワーズの20得点を筆頭に3ポイントシュート3/3の富樫と石井講祐、マイケル・パーカー、チェンバース、小野龍猛の6人が二桁得点をマークした千葉の前に反撃の糸口を見つけられないまま87-65の大敗に終わった。
試合後のコメント
大野篤史ヘッドコーチ(千葉ジェッツ)
「今日はマインドセットが出来ており、ディフェンスから走るという自分たちのトランジションゲームが展開できたように思います。5月2日の川崎戦で僕たちはリバウンドにトラブルがあり、それを選手たちが身を持って経験できたことがよかった。(その経験があったから)今日はリバウンドにより集中して、自分たちのバスケットを貫けました。ディフェンスのレベルが落ちなかったことも勝因の1つだと思います。また、今日は西村が良い仕事をしてくれました。ボールをしっかり動かしてくれますし、彼が出ると富樫とはまた違うバスケットができます。ボールをしっかり扱えるのでターンオーバーも減るんですね。彼がドライブしてキックアウトからの3ポイントやそこから出るエクストラパスなどオフェンスの良い潤滑油になってくれて今日も助かりました。ホームで戦うことで、ファンの皆さんには背中を押してもらえたのも大きいです。僕だけじゃなく、選手、スタッフ、フロントのみんながプライドを持って戦うことができました。明日もまた今シーズン自分たちが成長してきた姿を見せられるよう気持ちの入ったいいゲームをしたいと思っています」
西村文男(千葉ジェッツ)
「スタートで出たメンバーがいいエナジーを出して僕たちにつなげてくれたので、自分たちも負けないようにといい入りができました。2Qのブロックショットはイケるんじゃないかと勝手に判断して跳んだんですが、結果成功してよかったです(笑)。うちには10点、20点取る選手が何人もいるので、自分がコートに出たときはパスを散らすことを心がけています。オフェンスではしっかりボールをシェアして、その一方でディフェンスも大事なんだぞとみんなにうまく伝えることを考えていますね。今日は40分ディフェンスが良かったので、そこから走れる流れになったのが勝因の1つかなと思っています。ただ、明日は川崎さんも奮起してくるだろうし、今日より流れの悪い時間帯が増えるはずです。我慢比べになりそうですが、去年はそこで崩れて負けたという印象があるので、ここからまたチーム一丸となることが大事。本当に一丸となって勝利をつかみに行くつもりです」
篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)
「出だしが全てだったと思います。うちがイージーシュートを外してしまったところから走られて、1番やられてはいけないことを出だしでやられてしまいました。そのせいで終始うちは重くなってしまった。本当にここまで誰にも当たりがこないのもゲームは珍しいというか。インサイドを突いてファウルを稼ぐところまではできていましたが、そこからの展開がダメでした。ゴール下のイージーシュートはポロポロ落としてしまったし、ズレを作っても打つべき選手が打たなかったり、ディフェンスを崩すことはできてもそれをしっかり数字に結び付けられなかったのは、千葉さんのディフェンスがどうこうという問題じゃなくて、僕たちの(プレーの)精度が足りなかったということだと思います。我慢できずに心が折れてしまったという意味では、今日の試合は自滅でした。個人的には足の調子は日に日に良くなっていますし、今日もほぼ足の状態を気にしないでプレーできたのですが、性格的に気合いを入れすぎると空回りしてしまうところがあるので、最初はちょっと様子を見ようという気持ちで入りました。けど、今思えばもっと最初からアグレッシブに行けばよかったと思います。とにかく千葉さんと一発勝負でなくて良かった。まだ明日があるので、気持ちを切り替えて全員で勝利をつかみにいきます」
辻直人(川崎ブレイブサンダース)
「出だしの悪さが痛かったです。コートに出ている5人の気迫というか、戦う姿勢が相手より劣っていたなという気がします。それがちょっとした気持ちの緩みになって、ボールを取ったときにスティールされたり、リバウンドを取れるところで奪われたり、ターンオーバーしてしまったり、そういうミスにつながったと思います。チャンピオンシップでは一瞬一瞬気を抜いていけないのに、そこでは千葉さんの方が僕たちより上回っていました。何よりもうちに足りなかったのはアタックする積極性です。ミスが多かったのでだんだんみんなが消極的になってしまった気がします。今大切なのはまず気持ちを切り替えること。そして、明日の試合の出だしでどれだけ気持ちを強く持って臨めるかだと思います。今日、試合中にニック(ファジーカス)が言っていたのは『自分がヒーローになろうとしなくていい』ということ。自分がヒーローにならなくてもチームが勝つために何ができるかを考え、1人ひとりがもっと勝利に貪欲になって戦う必要があります。貪欲さを持って明日は勝ちたいと思っています」
誰もが予想しなかった大差がついた第一戦。ベンチから出るポイントガード藤井祐眞は「今日のような展開のときこそ自分がリズムを変えるきっかけを作らなければならなかったのに何もできなかった。千葉の強さを見せつけられた試合でした」と、唇を噛んだが、そのあとにはすぐ「でも、まだ終わったわけじゃない。自分たちがこの1年やってきた川崎のバスケットを全て出し切れるよう明日は頑張ります」と、続けた。
また、勝った千葉の小野龍猛もこう言う。「正直、今日の試合がこんな展開になるとは考えてもみませんでした。1点を争うタフな試合になると思っていたし、その準備もしてきたつもりです。でも、その準備は明日も役立つはず。今日はうちのシュートがよく入ったけどそれはたまたまで、勝てたのはリバウンドとディフェンスが良かったからです。勝因はそれしかありません。だから、明日も今日以上にそこを頑張れるよう、もう1度気を引き締めたいと思います」
勝っても、負けても今日は今日。両者気持ちを切り替えて戦う第2戦は5月13日(日)、船橋アリーナにて14時にスタートする。
文・松原貴実 写真提供・Bリーグ