アルバルク東京vs三遠ネオフェニックスは前半を終え、53-28。25点もの大量リードをしていたのはホームのA東京の方だった。しかし前節、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦も同じように前半で大差をつけながら、最後の最後に大逆転を許した試合を目の当たりにしており、何かが起きそうな予感もしていた。
三遠はロバート・ドジャー選手をケガで欠き、A東京戦での外国籍選手は2人しかいない状況である。ウェンデル・ホワイト選手とスコット・モリソン選手はお互いに、平均より10分ほど多い30分間コートに立ち続けた。厳しい状況下、第3クォーターも19-17でA東京が上回り、72-45とさらにリードを開かれる。
「相手のボールムーヴが良かったので、少しでも歯車を狂わせたかったし、相手の嫌がることをしないといけない」と自らが判断し、「思いっきりプレッシャーをかけていきました」と行動に移した鈴木達也選手。諦めずにディフェンスから立て直したことで、思惑通りにA東京の歯車を狂わせはじめた。三遠は一方的にオフェンスを成功させ、徐々に点差が詰まっていく。
「こちらが弱っている時間帯は全部決めてきたのはさすがだな」と藤田弘輝ヘッドコーチは相手を称えた。前半、A東京の2Pシュート成功率は80%(20/25本)、おもしろいようにボールがネットに吸い込まれていく。第4クォーターのA東京は5点しか挙げられず、そのうちの2点はフリースローだった。唯一決めたフィールドゴールは、安藤誓哉選手の3Pシュートである。しかしその1本もまた、三遠の勢いを止めるには十分だった。
77-67と三遠は10点差まで追い上げたが、この試合をA東京は逃げ切ることに成功。チャンピオンシップ出場へ向け、是が非でも白星が欲しかった三遠は痛い2連敗を喫した。
僕らはディフェンスのチーム
3月31日のシーホース三河戦で負傷し、戦列を離れていた鈴木選手がこのA東京戦から復帰。「シーズン終盤はほとんどの選手がどこかしら痛いところもあり、万全なコンディションではないと思います」という鈴木選手も無理を押し、「チームのために少しでも力になれたらという思いでプレーしていました」。藤田ヘッドコーチも「まだ本調子ではないが、今日の鈴木のパフォーマンスはポジティブなものだった」と敗れはしたが、司令塔の復帰はチームにとっても大きかった。
2月から3月にかけ、三遠は7連勝を挙げた。しかしその後は6連敗。鈴木選手がケガをした翌節の富山グラウジーズ戦で1勝を挙げたが、その後はふたたびA東京戦まで5連敗。この1ヶ月間で1勝しか挙げられていない泥沼の状態にいる。勝てなくなってしまったこの状況について、ケガがあったからこそ俯瞰して見ることができていた鈴木選手は、その要因をこのように挙げた。
「自ら言い続けていることですが、僕らはディフェンスのチーム。誰かがケガで抜けても、ディフェンスはやり続けなければいけない。それを言い続けてきたにも関わらず、ディフェンスでの波があったことが今の順位にいる要因になってしまっていると思います」
ラストクォーターで仕掛けたボールマンプレッシャーは、「誰が先発であってもやるべきだった」と鈴木選手は指摘する。もう後はない。ゲームの最初から自分たちのスタイルを貫かなければ、本来の姿も出て来ない。そして、レギュラーシーズンも残り5試合しかない。
「このチームは、一人ひとりが役割を果たしてこそ力を発揮する。今回、ドジャーがケガをしていたり、なかなかタフな状況でもある。でも、今日の第4クォーターのようなプレーを40分間できるようにしていかなければならない」(鈴木選手)
残留争いの足の引っ張り合いも含めて混戦の中地区
栃木ブレックスがチャンピオンシップ出場を決めたことで、残る一枠は中地区2位を残すのみとなった。富山に2連勝した名古屋Dが借金生活から抜け出し、28勝27敗でチャンピオンシップに大きく近づく。同じく島根スサノオマジックに2連勝を挙げた新潟アルビレックスBBが3位に上がり、3ゲーム差で追いかける。
三遠は2連敗を喫したことで、B1残留プレーオフへ引きずり込まれそうな状況にもいる。すでに確定した島根と西宮ストークスに続き、次戦の名古屋D戦で敗れると横浜ビー・コルセアーズも決まってしまう。ギリギリ4番目にいる滋賀レイクスターズは21勝34敗であり、三遠(23勝32敗)との差はたった2ゲームしかない。その間には大阪エヴェッサと富山が1ゲーム差でひしめき合っている。チャンピオンシップ出場権争いだけではなく、知らぬ間にB1残留プレーオフへの足の引っ張り合いが行われていた中地区はどっちにしても混戦状態なのだ。
「残り5試合を全部勝つつもりで取り組んでいきたい」と藤田ヘッドコーチは気を引き締めていた。まずは今週末、アウェーでの新潟戦をしっかり勝って勝率で並ばねばならない。
文・写真 泉 誠一