8つしかないチャンピオンシップ出場枠のうち、すでに6つが埋まった。残る2枠はワイルドカードと中地区2位。30勝を挙げた栃木ブレックス(30勝23敗)が、続くサンロッカーズ渋谷とレバンガ北海道(ともに25勝28敗)に5ゲーム差をつけており、今週末の結果によってはワイルドカードの方が先に決まりそうな勢いである。混戦の中地区2位争いは、4ゲーム差で4チームがひしめき合う状況だ。
2位:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(26勝27敗)
3位:三遠ネオフェニックス(23勝30敗)
4位:新潟アルビレックスBB(23勝30敗)
5位:富山グラウジーズ(22勝31敗)
※2018年4月16日現在
前節は東地区との対戦が相次ぎ、三遠と富山が連敗する中、名古屋Dはアルバルク東京から貴重な1勝を挙げた。強豪キラーの新潟は、西地区優勝を決めた琉球ゴールデンキングスから1勝を奪い獲り、三遠と勝率で並んだ。
『ここで自分が攻めなければいけない』と流れを読んで17得点
「結果として1点差でも勝てたことがうれしいですし、次のステップに行けるかなとすごく感じられる試合でした」
先発ポイントガードとして名古屋Dを引っ張る笹山貴哉選手は、A東京を相手に93-92と逆転で勝利をつかんだ試合に手応えを感じていた。
A東京に対し、「インサイドではうちにアドバンテージがある」と梶山信吾ヘッドコーチは考え、そのための準備をして臨む。ビッグマンによるポストプレーではなく「バリエーションを変えつつ、みんなでペイントアタックすることを徹底させた」ことで、A東京の鉄壁なディフェンスをこじ開けていき、勝機をつかんだ。
笹山選手は「そこまでハードにディフェンスが出て来ない」と冷静にマークマンを見て対応し、17点を挙げる。感覚としては、20点を挙げたシーホース三河戦に似ていたそうだ。4月8日の新潟戦でも20点を挙げている。ゲームをコントロールしつつ、積極的にゴールを狙うポイントガードは、「負ける試合は得点が止まることが多い。そういうときこそ自分が攻めないといけないと思っており、意識的に攻めるようにしています」と試合中の流れを読みながら対応できていることが好調の理由だ。
チャンピオンシップ出場はあくまで通過点
アーリーエントリーから数えて4シーズン目を迎える笹山選手は25歳。主力としてコートに立つのは、同世代ばかりの名古屋D。中東泰斗選手と藤永佳昭選手は同期であり、一つ上の張本天傑選手、逆転シュートを決めた船生誠也選手は24歳、先発を任されているルーキーの安藤周人選手と若い力で勢いに乗せたい。1勝ずつ成功体験を積み重ねることで、名古屋Dが一皮剥けるターニングポイントになるような期待感もある。
「現状の勝敗はあまりよくないですが、1シーズン毎にできることが増えているという手応えは感じています。『(勝負どころは)ここかな』というポイントガードとしての嗅覚もすごく必要であり、それを他の選手から学んだり、実際のコートで試しながら経験を積むこともできています。少しずつですがステップアップしてきたことをもっと全面的に出し、結果として表せるようになればもっと良くなると思っています。そこは焦らず、チームメートと一緒に一歩ずつ上に行きたいです」
昨シーズンは後半に失速し、あと1歩のところでチャンピオンシップ出場を逃した。「チャンピオンシップには必ず出たいですし、出られると思っています」という笹山選手にとって、あの悔しさが原動力にもなっている。その教訓を生かし、「チャンピオンシップに出ることも本当に大切ですが、出たあとこそ強豪との対戦が待ってます。そこで勝つことに照準を合わせながら、僕らの完成度をどれだけ高められるかが課題になってきます」と話しており、チャンピオンシップ出場はあくまで追加点でしかないことを強調していた。
混戦の中地区は直接対決も多く、まだまだ順位が入れ替わる可能性もある。名古屋Dは次節、ホームのドルフィンズアリーナ(※今年3月26日より愛知県体育館のネーミングライツをクラブが取得)で5位・富山と対戦。5月はさらにホームが続き、中地区1位の三河そしてラストは栃木との対戦が待っている。
梶山ヘッドコーチは、「ディフェンスがアグレッシブなチームとの対戦が残っているので、チャンピオンシップに行くためにもそこを乗り越えていかなければならないことを僕ら自身が自覚しなければならない。A東京戦での勝利はすごく大きな自信になった。目の前の試合を一つひとつ集中して戦っていけば、チャンピオンシップはあとからついて来る」と言い、若い選手たちに余計なプレッシャーをかけないようしっかりと手綱を握っていた。
文・泉 誠一 写真・吉田宗彦