東京エクセレンスでは選手とジェネラルマネージャーを兼任し、平日はサラリーマンとして働く宮田諭選手。職場もコートも同じ組織体であり、どちらも共通するおもしろさがあるそうだ。
『おもしろい教材になれば良いかな(笑)』
ーー期待する若手の丹野合気選手や田口暖選手に対してプレーで示し、その結果、3月17日にはトリプルダブルまでやってのけましたね。
いや、あのときはオーバータイムだったし、試合後に言われるまで知らずにビックリしました。自分が攻めるバランスと周りを使うおもしろさの両方を若い彼らが身につけるのはまだ難しいと思います。今の彼らは自分が攻める方だけで良いんです。こんなに動かないおっさんでも、見るところを見ていればやれることがいくらでもあることは練習でもいろいろ見せたり、教えたりしています。彼らにとって、おもしろい教材になれば良いかな(笑)。
ーー40歳にして初のトリプルダブルを達成した感想を聞かせてください。
B2に比べて(コンタクトに対する)プレッシャーは少ないので、得点に関してはオープンになればシュートは入る部分もあります。アシストは周りのおかげで、みんながよく決めてくれました。あとは性格的にリバウンドが好き。ルーズボールからリバウンドに絡むプレーが好きです。今は本当にバスケットを楽しんでる分、長くコートにいるために(体力を)セーブしようとも思わない。疲れたらそこで切り捨てて良いと、石田(剛規)ヘッドコーチにも頼んでます。そう思ってプレーしているだけなので、トリプルダブルはたまたまです。
ーースタッツを残して、B1からのオファーを虎視眈々と狙っているとか?
それは全然ない。ベテランガードとしてB2からいくつか話もありました。もちろん自分がサラリーマンでもあるので、本気で来るわけがないと思って声をかけてくれているんだと思いますよ(笑)。今は伸び盛りのチームに対し、自分も一生懸命やりながら若手に伝えていける環境は本当にありがたいし、楽しいです。
トヨタ(現アルバルク東京)にいた当時、折茂(武彦)さん(レバンガ北海道)や古田(悟)さん、佐久本(智)さん(JX-ENEOSサンフラワーズ/アシスタントコーチ)など先輩方が、全然うまくいかない僕や桜井(良太/北海道)などに対して、いつも前向きに声をかけてくれたことでなんとかここまで形になれました。齋藤(豊)もそうですが、トヨタで学んだ同じことを東京EXの若い選手に伝えていくことが、今後のバスケ界のためにも良い役割なのかなぁ。僕がアドバイスしたことに対し、それがゲーム中にうまくいったときのうれしさはなかなかできない経験です。おっさんみたいなことを言ってますけどね(笑)。
『宮田はあそこで楽しくやってるからしゃーねーな』
ーー東京EXでは選手とジェネラルマネージャーを兼務、さらに平日はサラリーマンとして働いており、その三足の草鞋はどうバランスを取っていますか?
昔、プロとしてバスケットだけに専念できていたときは全然気付かなかったですが、使い方さえうまくやれば時間っていっぱいあるんだなと感じています。もちろん体力的にはきついです。平日は仕事を終えた夜に練習しますが、プロ選手たちは昼間にワークアウトをしており、その差を自分たちは空いた時間を有効活用して補わなければなりません。
でも、選手と仕事の両立は贅沢をさせてもらってます。会社の方々もよく応援に来てくれますし、気付けばいるって感じ(笑)。本当にありがたいです。「もっと働けよ」って言われそうですが…。
ーーユニフォームを脱ぐときがくれば自ずと働かなければならないわけなので、今を楽しんで欲しい……とこちらが言わなくてもコート上では本当に楽しそうでした。
人に迷惑をかけていることは分かってます。だからこそ楽しく、一生懸命やらないといけないと思っているし、どれも中途半端にしてはいけないと思ってます。「宮田はあそこで楽しくやってるからしゃーねーな」と思ってもらえるように目いっぱい楽しんでます(笑)。
ーー会社でも年齢とともにポジションアップしていると思いますが、チームスポーツも同じ組織であり、どちらにも生かされる部分もありますか?
どんなところであっても組織=チームじゃないですか。その中で人とどう対峙していくか。僕は基本的にスポーツで育ってきたので、それは会社でも同じだと思っています。ジェネラルマネージャの仕事も、スポンサーさんにお会いして話すことも自分にとっては大きな経験になっています。それもおもしろいと思えるのはサラリーマンと両方やってるからかもしれません。特に僕や齋藤は、コート外の方に興味津々です(笑)。純粋に新しく会う人たちの考えが刺激的だし、おもしろいです。
12連勝中と波に乗る東京エクセレンス。次節は4月1日-2日にシーズンランキングトップの八王子トレインズをホームに迎える。今シーズンの戦績は1勝3敗。逆転優勝を目指すためにも負けられない。そして、ふたたびホームで40歳のトリプルダブルもあるかもしれない!?
文・写真 泉 誠一