昨シーズン、B2東地区2位の茨城ロボッツだったが、1位の群馬クレインサンダーズに8ゲーム差と大きく引き離されていた。今シーズン、その両チームは揃って中地区へ移動。現時点で首位に立つファイティングイーグルス名古屋から6位のアースフレンズ東京Zまで10ゲーム差しかない激戦区である。
昨シーズンは群馬と6度対戦し、1度しか勝てなかった。今シーズンは3戦目で1勝目をもぎ取っている。4戦目は敗れたが現在1勝3敗。残る2試合は茨城ホーム開催(4月28日-29日@青柳公園市民体育館)。そこで2連勝して3勝3敗に並ぶとともに、プレーオフ進出を目指すためにも、前節の群馬戦で浮き彫りとなった課題解決が急務である。
スタートとベンチメンバーのギャップが課題
78-96で敗れた3月4日の試合後、岩下桂太ヘッドコーチは「ペイントエリア内のスコアが20点(群馬34点)、完全にインサイドを抑えられてしまった」と敗因を挙げていく。18点差をつけられたのは第2クォーターだった。「スタートとベンチメンバーのエネルギーやアグレッシブさ、メンタル面でのギャップを正直言って感じている。そこが埋まってこないと、ベンチメンバーがステップアップしてくれないと今後の試合は難しくなってくる」。タイムシェアし、第2クォーターに大きくメンバーを入れ替えたことが裏目に出てしまった。選手兼任の岡村憲司スーパーバイジングコーチも「控え選手たちの普段のモチベーションや練習の取り組み方をどうしているのかを再度問いただして、彼らを引き上げなければいけない」とチーム全員が同じベクトルに向かって行くための方向修正が必要である。
一方で、先発メンバーの活躍は目覚ましい。40分間戦える無限の体力があれば、茨城の勝率も上がっていくだろうが、タフなリーグ戦はそういうわけにもいかない。眞庭城聖選手は3Pシュートを武器に今シーズンは平均11.9点と二桁に乗せている。平尾充庸選手、髙橋祐二選手、久保田遼選手の移籍組がフィットしてきたことも好調の要因である。岩下ヘッドコーチも、「新加入選手たちとこれまでいる選手たちがうまく噛み合ってきた。あとはベンチメンバーがグッと引き上げて歯車がひとつになるチームケミストリーが出てくれば本当に良くなっていく。あと少し」と手応えを感じていた。
平尾選手と髙橋選手のガードコンビはともにコントロールができ、得点力もあり、何よりもディフェンスに長けている。「群馬に勝てたのも彼らのディフェンス面での貢献が非常に大きかった」と前からプレッシャーをかけ、ハードワークを続ける彼らに対して岩下ヘッドコーチの信頼も厚い。
「彼らがチームのコアになっている。片方がディフェンスでプレッシャーをかけられても、もう片方がボールを運べるし、なによりも二人とも身体を張ってディフェンスができ、この二人を同時に出せることがこのチームの強み。それに加えて山口(祐希)が入ると流れやリズムを変えてくれることも利点だと思っている」
『楽しくバスケットをすることが一番』髙橋祐二
群馬戦では15点、14点と連日二桁得点を挙げた髙橋選手だが、オフェンスを意識し始めたのも今年になってからである。
「ディフェンスでは貢献できていたのですが、オフェンス面でももっとできるのではないかと感じ、そこができれば自分自身ももっとステップアップできると思いました。さらなる高みを目指そうと思って新たな目標を立てました」
レバンガ北海道の松島良豪選手や千葉ジェッツの原修太選手と同じ国士舘大学時代は、「ディフェンスとともにオフェンスも得意でした」。だが、山形ワイヴァンズでプロの道を歩み始めると、「生き残っていくためにもひとつ何か特化したものが必要」と感じ、ディフェンスを最重要視してきた。茨城に移籍し、ディフェンスに自信がついてきたこともあり、さらなるレベルアップを求めてアグレッシブに攻めるスタイルを取り戻しつつある。
平尾選手とのコンビについて髙橋選手は、「一緒に出ているとすごくやりやすい。しゃべらなくても分かりあえている部分もあります。平尾さんに対してディフェンスのプレッシャーが強ければ自分がボールを運べば良いし、連携はうまくできていると思っています。これからもっともっと連携を高めていけるようにしたいです」。平尾選手は奈良から、髙橋選手は山形から移籍してきたばかりであり、コンビプレーが熟してくるのはこれからである。
ハッスルディフェンスをベースに、アグレッシブなオフェンスでゴールを狙う髙橋選手はコート上では楽しそうなのが印象的だった。
「楽しくバスケットをすることが一番です。そうすることで結果がついてきたり、お客さんもその姿を見て楽しんでもらえると思っています。一生懸命バスケットを楽しんでいる姿を見て、ファンも楽しんでいただければ最高です」
NBL時代は経営難やシーズン中の選手大量離脱などいくつもの問題を抱えていた元つくばロボッツ。会場に行けば、数えられるほどしか観客はいなかったのも今は昔。茨城ロボッツとなり、水戸に拠点を移した今は多くのファンに支えられるチームへと大きく様変わりしていたことに驚かされる。
この日の取材を終えた帰り際、山谷拓志社長に挨拶に行くとその努力の成果を伺うことができた。今ではB2トップクラスの運営基盤を誇り、インフラこそ最大の課題と思っていた茨城に来年開催される国体に向け、まもなく水戸市に5千人アリーナが誕生する。さらに、筑波大学が2020年を目指して8千人アリーナ建設も大きな話題となっており、ダブルフランチャイズで茨城県を盛り上げる構想があるそうだ。
運営面もアリーナ問題もクリアされ、B1昇格へ向かって追い風が吹いている。あとは指摘されたベンチメンバーたちがモチベーション高く、自信を持ってチームを勢いづけることに期待したい。アリーナが整備される2019-20シーズンまでにはB1に上がれなければ、せっかくの新アリーナも宝の持ち腐れになってしまう。
茨城ロボッツ
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文・写真 泉 誠一