12月2日、3日、横浜ビー・コルセアーズと対戦した琉球ゴールデンキングスは1戦目(90-52)、2戦目(74-55)といずれも大差をつけ、初の関東遠征を勝利で飾った。2戦目に24分半出場した#13津山尚大はベンチスタートながらチームに勢いをもたらすプレーで12得点、6アシストをマーク。「まだまだ課題はありますが、その分のびしろも大きいですよ」と、佐々ヘッドコーチも目を細める。高校卒業後プロの道を選んで4年目となるシーズン、「毎日が勉強」と言いながら進化を目指す21歳だ。
――横浜との2連戦はともに快勝となりましたが、特に1戦目は早くから大差がつきました。途中からコートに出るときはどんな気持ちで臨みましたか?
みんながすごくいい状態でプレーしていたので、自分が出るときは1番にディフェンスを心がけていました。オフェンスではみんながノッてる中で(途中から出る)自分がすぐ乗り切れないとしても、ディフェンスではみんなと同じトーンにセットして、点数が離れているからこそ頑張ろうと思っていました。
――ベンチスタートには先発とはまた違った難しさもあると思います。そんな中で自分のストロングポイントはなんだと思いますか?
貪欲に点を取りに行くこと、常に積極的にゴールに向かうところは自分のいいところだと思っています。あと、負けん気は強いです。1戦目では僕がいい加減なパスを出してしまって、佐々さんに怒られたんですが、そういうときにもちろん反省はしますが、それと同時に次は絶対いいプレーをしてみせるという気持ちになります。厳しく言われたときにもへこたれないで、見返してやるじゃないですけど、次に向かうことができるのは自分の強みかなあという気がします。
――津山選手は福岡大附属大濠高校を卒業してすぐプロの道を選びました。プロになるのはいつごろから考えていたのですか?
それはもう中学のときに決めていました。それで高校を卒業したらすぐプロになれるような、たとえば大濠とか北陸とか福岡第一とか洛南とか、いわゆる強豪校でやりたいと考えていたのですが、その中で1番最初に声をかけてくれたのが大濠で、ここで頑張って結果を出してプロに行きたいと思いました。今はまだ高校を卒業したら大学でプレーする選手が多いですが、自分がもっともっとプレータイムをもらって活躍すれば高校からプロになろうと思う選手も増えるかもしれません。実際に大学かプロか迷ってる選手もいると思うので、そういう下の(世代)の人たちのためにも頑張りたいという気持ちがあります。
――とはいうものの、プロになった1年目は不安もあったのでは?
もう不安しかなかったです。それまで自分の考えが甘くて、プロになってもすぐに1対1ができて、すぐにフィニッシュまで持って行けて、すぐにディフェンスもできるようになると思ってました。だけど、当然ですが、高校のときとは全然違っていて、システムの中でオフェンスするのは初めてだったし、ピック&ロールも入ってきたし、その他のこともアジャストしなければならないことがいっぱいあって、本当に大変でした。18、19(歳)のころは毎日悩んでましたね。20歳になったころやっと少しずつ慣れてきて、bj(リーグ)で優勝できたことが自信にもなりました。
――昨年はBリーグが発足して、環境も変わったのではないですか?
そうですね。正直、(旧)NBLチームとの力の差も感じました。その中で自分はピック&ロールとかディフェンスもそうですけど、オフェンスのシステムの理解度を高めるというか、バスケIQを高めることを目指してやっていました。
――そして、Bリーグ2年目となった今シーズンはヘッドコーチが変わり、選手も大幅に入れ替わりました。どんな心境でしたか?
それも正直、不安でした。今まで一緒にやってきた選手がいなくなって、佐々(宣夫ヘッドコーチ)さんもそうですが、優勝した栃木ブレックスから古川(孝敏)さん、須田(侑太郎)さんが来て、ベテランの石崎(巧)さんとか二ノ宮(康平)さんとか、アイラ(ブラウン)もヒルトン(アームストロング)もハッサン(マーティン)もみんなすごい選手ばっかりで、その中で自分はプレータイムをもらえるのかなと思うと、やっぱり不安が大きかったです。
――現在はどうでしょう?
周りのレベルが高いのは間違いないですが、そういうレベルの高い人たちと練習で常にやり合えるのは自分のレベルアップにもつながっている実感があります。今は昨年以上に試合をイメージしながら激しい練習をしています。佐々さんもそこをしっかり見て、できていないところはダメ、できているところはそれを続けろと言ってくれるのでミスを恐れず思い切ってプレーできてるように思います。
――ガードの先輩たちはどうですか?刺激を受けることはありますか?
すごく刺激を受けているし、なんていうか新鮮な感じがします。自分は3シーズン同じメンバーとやってきて、そこには岸本(隆一)さんというすごいガードもいていつも負けたくないと思ってました。そこに石崎さんとか二ノ宮さんとか新しいメンバーが入ってきたことで、負けたくないというのは同じですが、今はそれよりプレーを見てバスケを学べている気がします。あっ石崎さんはピック&ロールをこう使うのかとか、二ノ宮さんはドライブしたときパスをこうさばくのかとか、そういうのを練習しながら学んでいます。新しい選手が入ってきたことで、自分の中にも新しいものが入ってきたみたいな。それがすごく刺激になっているし新鮮です。
――練習中にアドバイスをもらったりすることもありますか?
できないことは素直に自分からアドバイスを求めるようにしています。たとえば自主練のときに石崎さんに聞きに行くと、本当にていねいに教えてくれるんですよ。俺はこうこうだけど、おまえの良さはここだからもっとこうした方がいいんじゃないかみたいなところまで細かく教えてくれて、聞いていると本当にこの人はバスケの引き出しをいっぱい持っているんだなあと感じます。それに比べて自分はまだまだバスケがわかってないところが多いなあと思うし、石崎さんとバスケできるのは本当に楽しいです。
――そういった練習を通して自分に足りないものも感じますか?
感じます。佐々さんにもよく言われるんですけど、僕はボールへの執着心が足りていないと思っています。リバウンドの数も少ないし、ルーズボールで負けちゃうことも多い。ふっと気を抜くと、抜けたままになっちゃうんですね。集中力が切れてポカーンとしているときに佐々さんから「おい!」と言われてハッとすることがあります。それはこれから修正していかなければならない点です。プレーで言えばディフェンスは少しずつ付いていけるようになりましたが、コースを止めるためにしっかり押し出してコンタクトで負けないとか、ピック&ロールの精度を高めるとか、シュート力を安定させるとか、言い出したらいっぱいあるんですけど、今はそれを課題にして1つずつ階段を上っていけるよう頑張っています。
――将来の夢は?
海外でプレーしてみたいし、東京オリンピックに出たいという夢はあります。夢というより自分が目指しているものですね。そのためにも今はここでもっともっと成長しないと。まずは個人としてもチームとしても(シーホース)三河だったり、アルバルク(東京)だったり、強いチームに勝つ力を付けたいと思っています。
文・松原貴実 写真・安井麻実