11勝6敗と勝率で並ぶサンロッカーズ渋谷vs川崎ブレイブサンダースは、79-70でSR渋谷が勝利した。この試合を振り返る両指揮官は、「出だしが全てだった」といずれも同じ言葉で切り出していた。
“出だし”の第1クォーターは23-6、サンロッカーズ渋谷が先手を取る。ディフェンスからプレッシャーをかけてボールを奪い、56.3%の高確率でシュートを決めていった。SR渋谷の気迫に押されるように、“出だし”で何もできなかったのは川崎ブレイブサンダースの方である。シュート成功率はたった9.5%、なかなか見られない低確率を記録した。川崎の先発ポイントガードの藤井祐眞選手はイージーシュートを外し、パスミスからターンオーバーを犯すと、開始3分と持たずに篠山竜青選手との交代を告げられた。
「本来ならばディフェンスやルーズボール・リバウンドでもっとハッスルして、自分たちの流れで試合を進めたかったところをミスで流れを渡してしまったのは反省点であり、ポイントガードとして僕の責任。単純な僕の判断ミスが大きかった」(藤井選手)
リーグ戦は7連勝中のSR渋谷……しかしB2茨城に敗れ初戦敗退となった天皇杯
リーグ戦7連勝中と波に乗っていたSR渋谷であり、天皇杯もベスト8入りは揺るぎないと思われていたがB2茨城ロボッツに敗れ、まさかの初戦敗退。
「本当に悔しい負け方をしてしまった。負けたこと以上に、全く自分たちらしくないプレーをファンに見せてしまった。あれだけ大勢のサンロッカーズファンが新潟に来てくれたことに驚かされたし、本当にうれしかった。しかし、その期待に応えることができず、本当に悔しく、申し訳ない気持ちでいる。激しくプレーさせられなかったのはコーチの責任」
猛省する勝久ジェフリーヘッドコーチは「二度と同じ過ちを犯さないように、練習からチーム全員で準備してこの試合に臨んだ」。
SR渋谷の先発ポイントガードは、今シーズンより琉球ゴールデンキングスから移籍してきた山内盛久選手。勝久ヘッドコーチは、「ディフェンスでもオフェンスでも積極的にプレーしてくれる選手。特にディフェンスで流れを作ることに期待」し、ここ5試合連続で先発起用している。天皇杯での敗戦を教訓とした山内選手が、しっかりゲームを作っていた。
「先週の天皇杯で茨城に負けた試合の出だしが本当に悪かったです。ゲームに入る前に全員でもう一度その反省点を共有して、出だしから自分たちから流れを持ってくるように心がけていました」
篠山竜青の存在感
気迫で上回った最初の10分で、14点のリードを奪う。マッチアップする藤井選手のターンオーバーを誘発したディフェンスには、山内選手自身も手応えを感じている。だが、篠山選手には翻弄され、第3クォーターには10点差まで追い上げられる起点にしてしまった。
「もともとスピードがある選手ですが、そのスピードを7割や8割にしながら緩急の使い方や駆け引きがすごく上手いです。自分はまだ100%で全てをやってしまい、あまり緩急をつけた動きができていないので、そこは取り入れられるようにしたいです」
昨シーズンは天皇杯も含めて11試合も対戦してきた両クラブ。ベンドラメ礼生選手も昨シーズン11戦目を終えた後、「竜青さんのプレーを見ていても、盗むべきスキルは多い」とお手本にしていた。
今シーズンの篠山選手は日本代表と並行し、休むことなく戦い続けている。コンディションを考慮し、北卓也ヘッドコーチも藤井選手を先発で送り出す。「竜青さんのパフォーマンスが落ちないように僕がその分、休ませることができる時間をもっと増やせたら良いと思っています」と藤井選手も、篠山選手を気遣っていた。
しかし、その気合が少し空回りしてしまったこの試合の出だしでもあった。ミスにより、篠山選手を早々にコートに出さざるを得ない状況を招いている。川崎全体を通しても、ガード陣(篠山、藤井、辻直人)でチーム総数16本中、半分となる8本のターンオーバーをしてしまうとなかなか流れに乗りきれない。北卓也ヘッドコーチは「まだまだゲーム巧者ではない」と課題点として挙げていた。
“チームスピリッツ”であるディフェンス力に手応えを実感
SR渋谷は日立時代から伝統的なディフェンスのチームである。広瀬健太選手は、「ディフェンスはベースであり、『チームスピリッツ』として残していかなければいけない大切な部分です。ディフェンスに対する意識は、OBたちが残してくれたものをしっかりと培っていきたいです」と年々チームが様変わりする中でもしっかり伝統を継承している。
鋭い勘で相手のボールを狙う山内選手は、「いつでもスティールを狙いたい」のが本音である。だが、ギャンブル重視だったディフェンスも2年ほど前から意識を変えていた。
「Bリーグになり、ガードのレベルはすごく上がってきていて、あからさまに狙いに行ってしまえば、逆を突かれてしまいます。今日も篠山選手にはそれを見透かされて、裏を突かれてしまったシーンがすごくありました。オフボールのところから徹底し、スティールできなくてもミスを誘発するような……自分にスティールがつかなくても相手にターンオーバーをつけられるようなディフェンスを心がけています。そこはもっともっと出していきたい」
ハードにコンタクトしながらも、しっかりハンズアップしていたことでファウルはたった1回しかしていない集中力の高いディフェンスを披露していた。
「川崎のようなオフェンスで爆発力があるチームを前半で抑えることができ、選手たちは本当によくやってくれた」と労う勝久ヘッドコーチは、チームの伝統であるディフェンスに手応えを感じ始めている。
敗れた藤井選手だが、「チームとして出だしの第1クォーターだけは良くなかったが、それ以降はリードできています。ディフェンスでチェンジングしながら対応でき、良い流れでできていました」と気持ちを切り替えていた。
最前線からディフェンスする背中を仲間たちに見せ、チームを鼓舞することがポイントガードの大きな役割である。この二人は、いずれもディフェンスでハッスルする似たタイプ。本日12月2日(土)18:05から同じくとどろきアリーナで行われる第2戦は、この二人のマッチアップはさらに激しさを増しそうだ。
文・写真 泉 誠一