関西アーリーカップは、琉球ゴールデンキングスが滋賀レイクスターズを74-68で下し、栄えある初代関西王者に輝き、優勝賞金200万円を手にした。3 Pシュートを4本決め、14点を挙げた琉球#14岸本隆一選手がMVPを獲得。敗れた滋賀は脳しんとうを起こしたオマール・サムハン選手ら3名を欠き、外国籍選手が一人足りない状況の中でも、フルコートディフェンスをベースにチーム力で競ったことは大きな自信となった。
3位決定戦はホーム大阪エヴェッサと、B1に昇格したばかりの西宮ストークスによる関西ダービー。しつこいディフェンスと、10本リバウンドで上回った西宮が85-77で勝利。敗れた大阪は昨シーズンから7人が入れ替わり、まだまだチームとしての連携が取れていない。しかし、試合中にコミュニケーションを取りながら、なんとか向上させようという姿勢は見られ、噛み合ってくれば恐ろしい存在となる。
勝って当然と言われる琉球だが……
優勝するため、琉球の佐々宜央ヘッドコーチ自ら、選手たちにプレッシャーをかけた。
「周りには勝って当然と言われてますが、僕らはそんなことは思っていません。ただ、今大会に臨むにあたり、その期待に応えるためにも勝ちに行こうと臨みました」
優勝した後、岸本隆一選手は「我々はまだ、何も成し遂げていない」と本番がこれからであることを釘刺す。しかし、そのプレッシャーを乗り越え、栄えあるアーリーカップチャンピオンとなった選手たちに対し、「負ける経験をしたくはなかった。勝つ経験をして、B.LEAGUEの全国のチームと対等に戦えるようなチーム作りをしたい」と言う佐々ヘッドコーチは、さらなる高みを目指す。
2位となったが、低迷していた昨シーズンを考えれば、大きな飛躍を見せた滋賀。今シーズンよりチームを率いるのは、ショーン・デニスヘッドコーチ。ご存じの通り、栃木ブレックスのトーマス・ウィスマン元ヘッドコーチの名参謀として、B.LEAGUE初代王者へ導いたキーパーソン。また、ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチ(アルバルク東京)とともに、B.LEAGUE初年度を迎える前に各クラブのヘッドコーチたちへ世界基準のコーチングを教えた伝道師でもある。
外国籍選手が一人足りない中でも、今シーズンのテーマである「40分間戦い続ける」スタイルを見せ続けた。まだまだコンディションが整っていない中であり、並里成選手は「この2試合はきつかった」と正直なコメントを残す。だが、「これを40分間徹底できれば、必ず強くなれる」と手応えも感じている。この日、集まった多くのファンにとっても、期待できるシーズンと手応えを感じられたアーリーカップだったはずだ。
開幕を楽しみにするファンを満足させたアーリーカップ
アーリーカップ会見時、「関東アーリーカップを制したチームが、B.LEAGUEの優勝候補になるのではないか」と話していた大河正明チェアマン。その一方で、「関西が盛り上げなければいけない」と発破をかける。その言葉に奮起するように、4強に残ったB1クラブは関東勢に劣るであろうタレント性をチーム力で補っていた。もちろん、まだまだどのチームも未成熟であり、今後の仕上げ次第にはなるが、昨シーズンとは違い、ハイレベルな混戦状態になりそうだ。
「負けたら終わりの一発勝負」と大会テーマソング「SOUL BANGIN’」を歌う久保田利伸さんにも映像を使って煽らせていたが、2日目には初戦で敗れた同士の対戦があり、さほど緊迫感は感じられずに終わった印象がある。西宮の天日謙作コーチは「基本的に練習試合ですから…」と言うように、リーグ戦、天皇杯と並ぶ3大タイトルのひとつと銘打たれたが、クラブによってその捉え方は区々であった。
また、そのタイトルが各地域の4クラブにわたり、そのうちの東北アーリーカップは必然的にB2が制する構図もタイトルという意味合いが薄れてしまう感は否めない。ひとつのアイディアとして、現時点の戦いが予選ラウンドであり、各4地域から例えば2チームの代表、計8チームがシーズン中にホーム&アウェーでさらなるトーナメントを行いながら、唯一のカップ戦王者を決めたらどうか。B2勢が勝ち上がれば、成熟したチームとしてB1クラブと真剣勝負ができ、リーグ全体のレベルアップにもつながるだろう。
それでも、各地域のクラブを一堂に会して行われたお披露目ゲームは、ファンはもちろんだが、我々メディアにとっても新戦力や今シーズンのスタイルを垣間見られ、開幕を盛り上げるための素晴らしい大会であったことは間違いない。
チームの完成形にはほど遠く、開幕戦後も当分の間はトライ&エラーを繰り返しながら、理想に近づけていくのがリーグ戦である。もしかすると、年内中はつまらないミスやプロらしくないプレーで笑いを誘うこともあるだろう。NBAだってそうだ。それら全てを含めて、ファンの皆さんとともに愛すべきクラブを成長していくことが、長い長いシーズンの醍醐味である。
2シーズン目の開幕戦は9月29日〜。それまでにどこまで仕上げることができるか!? ここからが本当の競争だ。
B.LEAGUE EARLY CUP 2017(東北アーリーカップは9月8日開幕)
文・写真 泉 誠一