そんなにバス釣りが好きだったら、練習後すぐにでも行ける滋賀レイクスターズに行っちゃえば?
「いいんですか?」とまんざらでもない。すかさず三河の広報さんが「何を聞いてるんですか!」と割って入る。
そんなやりとりから楽しかったオフ企画。
シーホース三河が『男旅』〜#14 金丸晃輔篇〜として、旅企画をfacebookページで展開されておりこちらも必見!
金丸晃輔選手と待ち合わせたのはウカルちゃんアリーナ。そう滋賀の本拠地である。目の前には琵琶湖が広がり、平日ながら糸を垂らしている人も多い。金丸選手はすでに来ており、湖面を見ながら「けっこう大きいのがいますねぇ」とヨダレが垂れそうな勢いである。
もう一度、滋賀への移籍話を持ちかけてみた。
「でも、そうなったら周りの人から絶対に『アイツは釣りをしにやって来た』と思われるでしょ!」
移籍の意思はなく、三河ファンの皆さんご安心を。
金丸選手自身、オンとオフのバランスをしっかり取っていた。「バスケットばかりしているのは僕の中でダメなんです」と言うように、気晴らしが必要。しかも、仕事としてバスケットをしている以上、良いときばかりではない。
「悪いことを忘れさせてくれるのが、バス釣りなんです」
バスケットのパフォーマンスを維持するためにもオフが必要であり、そのバランスを上手に乗りこなしている。本格的なオフシーズンを迎え、バス釣りシーズンに突入したが、「オン」であるバスケットを完全に忘れたわけではない。
「オフのトレーニングもちゃんとやってますよ。この日は釣り、この日はトレーニング、この日は家族サービスとちゃんとやってます。忙しいんです!」
釣りとバスケットのバランスに対する誘導尋問に乗ってくれた。
ーー 釣りの最中は自分と向き合う時間でもあるかとは思うがどんなことを考えてるの?
釣れ出すとそれに没頭しちゃいますが、釣れなかったり、ポイントまで車で移動している時は、多少はバスケのことを考えます。来シーズンはどんなプレーをしようかなとか、そのためにどんな練習をしようかなとかを考えたりしますね。
ーー キャスティングと3Pシュートを決めることはどちらも決まった場所に向かって狙うわけだが、どっちが難しい?相通じるものはある?
キャスティングの方が断然難しいです。3Pシュートとは全然違うし、やっぱり思うようにいかないです。「シュートは入るけど、キャストは下手くそ」と仲間からよく言われます。まだまだみたいですね。
ーー 目指すところに投げることはできているの?
バスケットはただリングがあるだけで風などに左右されないですが、キャスティングは風や木などの障害物などがあり、同じ状況ではありません。それに合わせて先読みしてキャスティングしないと、狙ったところにはなかなかいかないです。
ーー 逆にその難しさを釣りで鍛錬していることでバスケットに生かせたりするもの?
いやぁ、それはないですね。(キャスティングで)右投げをしていると手首が痛くなってしまう時がある。それは商売道具でもあるので、ヤバいと思って最近は左を練習しています。
ーー 左手シュートを?
釣りの方です!左手シュートはいらないです。
ーー 釣りに関しては、人見知りすることなく積極的に話しかけるそうだが?
普通に「今日は釣れましたか?」って自分から話しかけます。
ーー えぇ!(驚) それはバスケでは見せない顔だよね。
はい。バスケ会場で相手に「今日の調子はどうですか」って話しかけたことはないですし、ほとんど話さないです。全然。
ーー 黙々とシュートを打ってるか、ベンチに座ってる印象しかない。
はい。基本、チームメイトともあまりしゃべんないですからね。
ーー バスケットをしている自分と釣りしている自分は、どっちが素なの?
え?全部出せるのは釣りなんじゃないですかね。
ーー 納得!こんなにしゃべる金丸選手は初めてだもん。
だって、バスケのコメントは毎回一緒じゃないですか。釣りはその日その日で状況が違いますからね。
ーー えぇ?バスケットの試合だって相手が違えば、会場も違うわけで……
まぁ、それは違いますが、やることは変わらないじゃないですか。シュートを打つだけ、とか。
ーー ゴメン、釣り素人なので言わせてもらえば、釣りだって糸に疑似餌を付けて投げてるだけと思う部分もある。
いやいやいやいやいやいやいやいや、全然違いますよっ(怒)。
こっちはいろんな条件とか違いがあるんですよ。時間帯や気温などいろいろあります。バスケはやることを一緒であり、それを突き詰めて仕事をしています。
(後編に続く)
文・泉 誠一 写真・安井麻実