“どちらが勝つだろうか?”、“どんな試合展開になるだろうか?” 試合前に自分なりのストーリーを考える時間が好きだ。
中地区1位の川崎ブレイブサンダース(37勝6敗)と西地区1位のシーホース三河(33勝10敗)の対戦は、昨シーズンのNBLファイナルと同じカードだけに好ゲーム必至という思いを描く。そんな妄想するひとときが、アクシデントにより思いのほか長引いた。
ウォームアップ中、208cm/133kgのアイザック・バッツ選手の豪快なダンクにより、三河サイドのリングが曲がったまま戻らない。そのためにゴールごと交換する事態となって試合が遅れる。しかも、同じことが2度起きる珍事となった。そんなハプニングを見られるのもライヴの醍醐味である。
いくつかのストーリーの中には、”ワンサイドゲームになるかもしれない”というのもあった。三河はバスケットボール・スピリッツ次号Vol.7の表紙を飾る橋本竜馬キャプテンを欠き、川崎はライアン・スパングラー選手が未だ復帰できていない。
38分遅れで、ようやくティップオフを迎えた。
フィールドゴール成功率71.9%の三河が前半で勝負を決めた
立ち上がりはどちらも確率高くシュートを決めていく。1クォーターのオンザコート数は三河『1』に対し、川崎『2』。スパングラー選手を欠き、三河にも帰化選手の桜木ジェイアール選手がいるが、オンザコート数が入れ替わる前に川崎は少しでもリードを広げておきたい。しかし開始6分、その桜木選手の2連続3Pシュートで三河が主導権を握る。最初の10分間で川崎も21点を決めるハイペースだったが、それ以上に三河は30点を挙げた。
オンザコート数が逆転した2クォーター、三河のフィールドゴール成功率はなんと71.9%(3Pシュートは60%)。驚異的な確率で前半を終えた。対する川崎は37.1%と半分程度に抑えられる。53-35と大量18点リードで折り返すはめになり、川崎の北卓也ヘッドコーチは「前半で試合が決まってしまった」と言うしかなかった。
金曜ナイトゲームは『ビール飲み放題付きチケット』を販売。Bリーグ勝率1位の川崎相手に、大きなリードを奪った三河ファンにとっては美味しいビールが次々と進む展開となる。ホームの川崎ファンは、飲まずにはやってられない展開がまだまだ続く。
3クォーター、エンドラインを陣取る三河ファンの目の前で、エースの比江島慎選手がドライブからダンクを決め、ひときわ大きな歓声が上がる。その比江島選手は、弊誌Vol.5「エースの名にかけて」の中で、川崎のエースであり、青山学院大学の先輩の辻直人選手をライバルとして挙げていた。腰の痛みから復調の兆しを見せる2人のマッチアップは見応え十分。追いかける川崎はディフェンスからスティールを奪って速攻を決めるが、その流れを断ったのがベテラン柏木真介選手の3Pシュートだった。試合巧者の三河が圧倒し、92-65で完勝。
今シーズン初顔合わせとなったNBLファイナルの再戦であり、優勝を逃した三河のリベンジに対する「強い気持ちがプレーに現れていた」と北ヘッドコーチは感じ取り、コート上で選手たちのプレーも後手に回ってしまった。
チャンピオンシップ進出へマジック1の川崎「たくさんのファンの前で決めたい!」
川崎は試合を通して37.1%とシュート確率は上がらず、65点に抑えられた。北ヘッドコーチは、「非常にハードにディフェンスされました。ディナイされた時にバックカットとかをすれば良いのに、なかなかその判断もできなかった。メンタル面で熱くなってしまった部分がありました」と話すとともに、三河のバスケットを称えるしかなかった。平均27.6点の大黒柱ニック・ファジーカス選手を17点に抑えた鈴木貴美一ヘッドコーチは、「全部を抑えるのは難しい。場所によって抑える部分を徹底した」というディフェンスが功を奏した。
チャンピオンシップまであと1勝の川崎だったが、ホームで足踏みする結果となった。逆にマジック5とした三河は、「しっかりリセットし、マインドセットをして、チャレンジャーの気持ちを持ってまた戦っていきたい」と鈴木ヘッドコーチは手綱を締める。川崎にとっても負けられない。第2戦でチャンピオンシップ進出を逃すと、2週間アウェーでの戦いが続く。「もちろん、たくさんのファンの前で(チャンピオンシップ出場を)決めたい」と北ヘッドコーチは勝利を誓った。
本日も川崎とどろきアリーナにて、15時よりティップオフ。先着3千名には真っ赤な「KAWASAKI HEART Tシャツ」がプレゼントされ、「あひるの空 展示コーナー」などイベントも盛りだくさんでファンを迎えてくれる。
文・写真 泉 誠一