6月のある日。
国内各所の有識者が思い思いにオンライン上で集い、喧々諤々の議論の末なんとなく形に収まっていく年間受賞者選考会、BBS AWARDが今年も開催され、熱狂に至ることもなくその幕を閉じた。
MVPはドウェイン・エバンス(広島ドラゴンフライズ)。
レギュラーシーズンのみならずチャンピオンシップでの活躍も加味されるこの選考会において、広島優勝の基礎となった働きを高く評価された。
だがこの決定も一筋縄ではなかった。
候補の一角として、最後まで受賞を争ったのはジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)だった。
彼の場合、その評価はBリーグでの成績に留まらず、昨夏まで遡る。
ワールドカップにおける日本代表の歴史的な快挙。
その余波によってBリーグ、そして日本のバスケットボールを沸騰させる熱源となってくれたことに報いたい思いは、選考員の誰しもが抱いていた。
リーグ優勝への貢献か、日本バスケットボール界への貢献か。
かように視野の広い選考方式を採用している本アワードは、その懐の深さゆえに頭を悩ますこととなり、最後の決断を下せぬまま時間ばかりが過ぎ去った。
まあでもどんなカテゴリーにおいても絶対的な選考の正解って存在しないと思うしぶっちゃけ好み?みたいなところがあると思うんです。数多いるバケモノたちの中からたった一人を選ぶとかそもそも無理ゲーなわけで、二人まで絞っただけでもすごい。我々すごい。そんなすごい我々が選ぶんだからもう正直どっちでもよくない?的な意志を暗黙のうちになんとなく共有した我々は、筆者激推しのエバンスへの授与でこの部門を着地させた。
提案者の責任として、敬虔なドウェイン・エバンス信者である僕がその選考理由を述べるとするならば、彼の持つ「コンスタンシー」にこそ最も大きな価値があると信じている。
安定、不変などを意味するこの単語は彼自身から発せられた。
CSセミファイナルの第3戦、勝利後のインタビューでエバンスは、優勝するためには何が必要かという解説者(=筆者)の質問に対し、「コンスタンシー」を挙げた。
それは決して個人的な成績の継続という意味合いではなかった。
常に状況が変化し続けるコートの中で安定した勝利を得るために、プレーヤーは変わり続けなければいけない。
最善の選択は、ときに自身の数字を著しく減少させるものだが、その決断を的確にできる人間が最も成功に近づく。
不変の成果を獲得するため、自分の役割や、数字や、感情を適切に変化させていく作業こそがエバンスの「コンスタンシー」なのだろう。
でなければ、あれだけコロコロと変わる髪型の説明がつかない。
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE
「Basketball Spirits AWARD(BBS AWARD)」は、対象シーズンのバスケットボールシーンを振り返り、バスケットボールスピリッツ編集部とライター陣がまったくの私見と独断、その場のノリと勢いで選出し、表彰しています。選出に当たっては「受賞者が他部門と被らない」ことがルール。できるだけたくさんの選手を表彰してあげたいからなのですが、まあガチガチの賞ではないので肩の力を抜いて「今年、この選手は輝いてたよね」くらいの気持ちで見守ってください。
※選手・関係者の所属は2023-24シーズンに準ずる。