2022年の夏。
船橋から豊橋へ大規模な民族移動が発生した。
この出来事が全国各地、そして国外からも優秀な人材を引き寄せ、Bリーグに地殻変動を引き起こした。
金丸晃輔、カイル・コリンズワース、ヤンテ・メイテンといった大型補強を施した三遠ネオフェニックスは、西地区最下位に終わった2021-22シーズンから一転、2022-23シーズン序盤には中地区首位を走っていた。
変化の代償を抱えながらも周囲が予想した通りの、あるいはそれ以上のパフォーマンスで、リーグトップクラスのチームへと生まれ変わった。
大改革は全てが順調だった。
10月までは。
11月になると、カイル・コリンズワース、ヤンテ・メイテンが怪我のため相次いで離脱。
チームの中心部が崩れた。
金丸晃輔もコンディションの調整に苦しみ、不調、欠場が続く。
だが主力を欠き、黒星が積み重なっていく中にあっても、佐々木隆成のプレーには衰えるところがなかった。
絶望的な状況下でも、チームが好調だったシーズン序盤と変わらぬ得点力を見せる佐々木。
スピードのあるドライブと精度の高いジャンプシュートで、三遠のオフェンスの拠り所となっていた。
正直に言うと、僕はそれが長く続くものだとは思っていなかった。
昨シーズンをB2で過ごしていたため、他チームの情報不足からくる一時的な成功に過ぎないと見ていた。
十分なサンプルが取れれば、抑え込まれてしまいかねない。
佐々木のボーナスタイムが終わって、それでもまだ主力が戻ってこれなければ、いよいよ三遠は取り返しがつかないかもしれない。
大改革も実らず、近年すっかりと指定席化してしまったどん底へと逆戻りだ。
そうなれば、新体制になって大幅な増加を見せた観客動員だってどうなるかわからない。
「チアのダンス、見たいからね〜」
と言って試合2時間前のシャトルバスに乗り込んでいた女性たちも、さすがに降格まっしぐらのメインコンテンツでは足を運ぶ気も失せるだろう。
ていうか前のシーズンでは座れて当たり前だった会場行きのバスがすし詰め状態ってどうやったらそうなるん?
会場着いたらめっちゃ並んでるし、試合中は立ち見まで出てるし。
すごいぞ、民族大移動。