ジェフ・ギブスは毎年BBS AWARDの『アイアンマン賞』の候補に名が挙がる選手である。188cm、110kgの強靭な身体そのものがすでにアイアンマンだ。が、あまりにもアイアンマンすぎることが災いしてか、その座を日本のベテラン選手たち(五十嵐圭、朝山正悟、竹田謙)に譲り続けてきた。しかし、考えてみれば40歳にしてゴール下で競り負けないパワーだけがギブスの武器ではない。経験値に裏付けされた高いバスケIQがチームにもたらすものは大きく、それは『今、足りないものを見極め、補う』ギブスのプレーからも伝わってくる。今シーズンを振り返れば、スターターとして宇都宮のインサイドを任されたのはライアン・ロシターとジョシュ・スコット。ギブスが先発したのは60試合中7試合にすぎない。が、『ギブスがベンチに控えている』という味方の心強さはイコール相手チームにとっての脅威であり、事実ベンチから出たギブスがチームの苦境を救う場面は幾度となく見られた。213cmのウイングスパンを生かした豪快なリバウンドをテーブス海は「まるで化け物」と評したが、23歳のチームメイトの目にはギブスが『怪物並みの頼もしい存在』に映ったということだろう。執拗で隙のないディフェンスとリバウンド力を武器としてレギュラーシーズントップの勝率をマークした宇都宮の中で、いずれの精度も落とさないシックスマン・ギブスの働きは必要不可欠なものだった。40歳にして衰えを感じさせないプレーの裏には人知れぬ努力があるに違いないが、本人は「コートに出たら自分の年齢は忘れているよ。体力的にもまだまだ若い選手に負ける気はしない」と、笑顔で言い切る。
今回のベストシックスマンには、大阪エヴェッサの橋本拓哉を推す声もあったが、最後は「BBS AWARDの不変のアイアンマン候補だからこそ成り得た最強のシックスマン」の意見に全員が納得する選考となった。
宇都宮ブレックス #4 ジェフ・ギブス
強くて、謙虚で、温かい人
前編 アメリカンフットボールで培ったパワー
後編 バスケット選手として、人として、子どもたちが誇りに思える父親でいたい。
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE