この賞の過去2年の受賞者を見てみると2年前が琉球ゴールデンキングスの古川孝敏で、昨年が千葉ジェッツの石井講祐(所属はともに当時)。どちらも泥臭いプレーを厭わず、それでいて得点チャンスもしっかりモノにするスコアラーという印象だ。しかし今シーズンは泥臭いところでより光を放つ男が受賞することとなった。サンロッカーズ渋谷のセバスチャン・サイズである。
昨年11月に彼を取材したが(公開は12月)、その直前、彼を少しでも知ろうとスペイン代表でのプレー集のググってみた。その第一印象がもはや“ザ・ハードワーカー”だった。フィジカルコンタクトを厭わずポジション争いを制すと、231センチのウイングスパンを生かしてリバウンドをもぎ取り、ガードにボールを渡すやリングに向かって全力疾走。これはSR渋谷に入団してからも変わらない、セバスチャン最大の売りである。
記事公開後におこなわれた天皇杯でSR渋谷は5年ぶり2回目の優勝を飾っている。その準決勝ではチームトップの20得点・8リバウンドをあげている。それまでのチームの慣例であれば、連戦となる決勝戦はチャールズ・ジャクソンの出番となるのだが、伊佐勉ヘッドコーチは「その日の朝に決めた」とセバスチャンの“連投”を決意。その期待に応えるかのように彼は“ダブルダブル”、しかも連日でチームトップとなる22得点・11リバウンドをあげている。Bリーグを「バック・トゥ・バック(2日続けてゲームがあること)のある、タフなリーグ」と言っていたセバスチャンが、連戦の2日目に前日以上のハードワークを見せたのである。
そして何よりセバスチャンがこの賞を受賞する一番の理由は、身内の暗部をさらすようだが、なぜかSpiritsが取材した選手は、取材直後にケガをしたり、契約を解除されることが多い。しかしセバスチャンは大きなケガもなく、中止になったとはいえ、シーズンの最後までハードワークし続けてくれた。Spiritsに非がないことを証明してくれたのである。ありがと……いや、グラシアス、セバスチャン! やっぱりキミこそが今シーズンのベストハードワーカーだ!
文 三上太
写真 B.LEAGUE