移籍選手の活躍が目立った今シーズンはベストトランスファー候補として、細谷将司(秋田ノーザンハピネッツ)、大塚裕土、熊谷尚也(川崎ブレイブサンダース)、アキ・チェンバース(横浜ビー・コルセアーズ)、川村卓也(シーホース三河)、齋藤拓実(滋賀レイクスターズ)、松井啓十郎(京都ハンナリーズ)、伊藤達哉(大阪エヴェッサ)、小野寺祥太(琉球ゴールデンキングス)など数多くの名前が挙がった。
サンロッカーズ渋谷に移籍した5人(野口大介、石井講祐、関野剛平、田渡修人、渡辺竜之佑)もまた、それぞれが求められる役割を迷いなく遂行し、新たな戦力としてチームを押し上げたと言えるだろう。その中で関野をベストトランスファーに選出した理由はディフェンスでの貢献度を評価してのことだ。今シーズンは41試合中40試合に先発出場し、出足からフルスロットルで相手の出鼻を挫く役割を果たした。レバンガ北海道時代の関野のあだ名は『ウルトラマン』。本人曰く「体力がないのが自分の弱点で、全力でコートを走り続けると燃料切れのタイマーがピコピコしてくるんです」というのがその名の由来らしい。しかし、移籍した今シーズンのSR渋谷は徹底したタイムシェアで激しいディフェンスの精度をキープするチーム。「おかげで自分のタイマーの点滅を心配することなく最初から思いっきりぶつかっていけました」。
昨シーズンは1勝もできなかったアルバルク東京、宇都宮ブレックス、千葉ジェッツの上位3チームから勝ち星を挙げ、天皇杯では川崎ブレイブサンダースに競り勝って5年ぶりの優勝に輝くなど渋谷の戦力の充実は顕著だったが、その要因の1つに関野の前から当たる激しいディフェンスがあったのは間違いない。色黒、金髪、陽気な性格。「一見するとチャラ男ですが、実はひたむきにバスケと取り組む男」と、チームメイトが評する関野は新天地・SR渋谷のスタイルにピタリとはまり、見事勝利のワンピースになった。
文 松原貴実
写真 三上太