1月15日に開催されたBリーグ初のオールスター戦は9567人の観客で満員となった代々木第一体育館で開催された。
ファン投票で選ばれたリーグの人気選手たちが一堂に会するオールスター戦は言うなれば年に1度の『お祭り』。音楽、映像、照明を駆使して創り上げた異空間の中で『魅せる』『楽しむ』『参加する』お祭りが華々しくスタートした。
最高のドラマを『魅せた』3Pコンテスト
ゲームに先立ってまず『魅せて』くれたのは3Pコンテストでデッドヒートを演じた田口成浩と金丸晃輔だ。前日行われた第1ラウンドで21点を稼いでトップとなった田口を暫定2位の金丸が猛追。「3Pコンテスト優勝」という公約を掲げた金丸は有言実行とばかり鮮やかにゴールを決めていく。60秒という時間制限もなんのその、時間をたっぷり残した最後一投(2点加算のカラーボール)は、周りを煽る余裕すら見せ、残り1秒に合わて見事にゴール!前日の18点と合わせて42点をマークすると大きく優勝に近づいた。
残るシューターは田口のみ。金丸に軽く肩を揉み揉みされた田口の顔がプレッシャーで歪むと、思わず「負けるな田口!」「君ならできる!」と、無責任な声援を送りたくなる。だが、無責任であろうとなかろうと、田口はその声援に応える男だった。59秒後、最後のカラーボールを残して田口の得点は20点、つまり最後の一投が成功すれば(21+22=43)優勝、落とせば敗退という劇的場面を迎えたのだ。「いける!いける!」と、後ろで大声援を送るのはかつてのチームメイト(秋田ノーザンハピネッツ)富樫勇樹。「勇樹のあの声が力となった」(田口)というコメントの信ぴょう性はともかく、次の瞬間最後のカラーボールは見事リングに吸い込まれた。何度も胸を叩き「おいさー!」と叫ぶ田口の姿に『本物のお祭り男』を見たファンは多かったに違いない。
みんなが審査員として『参加した』ダンクコンテスト
続いて行われたダンクコンテストの予選出場者はチリジ・ネパウエ(仙台89ERS)、ディアンテ・ギャレット(アルバルク東京)、アイラ・ブラウン(サンロッカーズ渋谷)、ジャスティン・バーレル(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)の4人の外国籍選手と身体能力の高さで群を抜く熊谷尚也(栃木ブレックス)、B2リーグのイケメンダンカー坂本健(Fイーグルス名古屋)の日本人選手2人。この6人の内、高得点をマークした上位2名が決勝へ進むこととなる。
審査員は三屋裕子日本バスケットボール協会会長、大河正明Bリーグチェアマン、それぞれのチームのマネジャーを務めるマギーさんと安田美沙子さん、観客から選ばれた小学生の計5名。1人10点を最高得点としたボードを選手の演技が終わるたびに掲げ、その合計得点で順位が決定する。が、この得点ボードは観客にも配られており、勝敗に関与はしないにせよそれぞれがジャッジに参加できる仕組みになっていた。さらに決勝戦では会場の観客、テレビ観戦のファンが審査員になりSNSを利用して投票。予選で50点満点を出したバーレルと49点で勝ち上がったブラウンの決勝対決は僅差でブラウンに軍配が上がった。
このスラムダンクコンテストは予選から各選手とも持ち味を出して場内を沸かせたが、関係ないところで大ウケしたのがブラウンのサポート役で登場した竹内譲次だ。周りが息を飲んで見守る中、ダンクのために上げたトスがそのままゴールインしてしまい、本人、立場なし。が、その瞬間、大爆笑の観客席からは一斉に『10』のボードが掲げられた。みなさん、審査員の『仕事』をわかっているのね。
コートと観客席が一体になって『楽しんだ』オールスター戦
24名の選手はB1リーグのチアガールが舞い踊る高い舞台の上から1人ずつ登場した。自分の名前をコールされると、大歓声が湧き上がる満員の観客席を見渡す。「すごい経験だった。あそこから見た景色は一生忘れられないと思う」(熊谷尚也)、「Bリーグ初のオールスターの舞台に自分が立っているのだと思うと胸がいっぱいになった」(安藤誓哉)、「緊張しました。でも、最高でした」(岸本隆一)、「今まで出場したオールスターの中でも最高の演出!」(五十嵐圭)。登場するなりチアと一緒に踊ってみせた張本天傑、自慢の力こぶを披露した鈴木達也、ひときわ大きな歓声で迎えられた田臥勇太は「さあ、一緒に楽しみましょう」というように大きく手を振った。
「ダンクしかしない」と公約したB.BLACK熊谷のレイアップシュート(本人曰く「アリウープしようとして失敗しちゃったんです」)で始まった試合は、「チームトップのアシスト」を公約したB.WHITEディアンテ・ギャレットが自分1人でがんがん攻め込み、観客席から「公約違反」の笑い声が響く。次はどんなプレーが見られるのかとわくわく感が増す中で、田中大貴がボースハンドのダンクを決めれば、比江島慎もダンクを返し、宇都直輝やニック・ファジーカスまでも普段はなかなか見られないダンクを披露した。
田臥は熊谷のアリウープを(今度は鮮やかに)演出し、今年34歳になる桜井良太は「若いやつには負けられねぇ」とばかりコートをダッシュ、連続してシュートを落とした川村卓也は「今日はシュートじゃないところで勝負しよう」と決め、ごりごりディフェンスで盛り上げ役に徹した。
そんな中、一気に主役の座をかっさらっていったのは167cmの富樫勇樹だ。ゴールに向かって走った富樫はゴール下で待ち受けていたバーレルにそのまま持ち上げられる形でダンクシュート!前日の記者会見で「ダンクを狙う」と言っていたとはいえ、ここぞ!のアイコンタクトで見事決め切った「生まれて初めてのダンク」(富樫)は場内のボルテージをMAXまで押し上げた。驚きと笑いと歓声と…まさしくこれぞオールスター戦。試合後、発表された富樫のMVPはだれもが予想し、だれもが納得できる受賞だったと言えるだろう。
お祭りは楽しんだモン勝ち!試合は117-95でB.BLACKの勝利となったが、コートと観客席が1つになって楽しんだ意味では参加した全員が勝者であり、また来年も観てみたいと思える最高のお祭りとなった。
文・松原 貴実 写真・B.LEAGUE/安井 麻実