「正直、『やったー!』みたいな気持ちは去年のほうが大きいですね。今年はホッとしたというか、やるべきことをやってるからそうなるよね、そうしなきゃいけないよねという感じです」
9月22日に開催された3×3.EXE PREMIERのプレーオフファイナルで、ALPHAS.EXEは昨年に続いてシーズン王者となった。リーグ参入初年度の一昨年もセミファイナルまで勝ち進むなど、チーム創設当初から国内屈指の強豪として地位を確立してきたということもあり、連覇を果たした今回は喜びよりも安堵感のほうが強かったというのが、落合知也の率直な心境だ。
自身がチームで様々な役割を担っていることも、その安堵感をより強くする要因となっている。選手でありながらチーム代表を務め、チームの運営全般を担当。練習では他の選手への指導もしつつ、コートを離れれば編成やチーム管理、スポンサー営業などにも時間を割かなければならない。背負うものが大きいからこそ、勝利という最も大きな責任を果たせたことに安堵するのだ。
「今練習で自分がコーチをしてて、スカウティングも全部やってます。選手の獲得もやってるので、コーチ、GM、オーナーと全部自分がやってる中で、シェフみたいな感覚が強いですが、選手たちが報われたことがすごく嬉しいです。国内だと、負けられない感じがするんですよ。彼らはそのプレッシャーとずっと戦ってるから、悔しい想いをさせたくないという気持ちがずっとあります。試合が近づくと、僕ですら毎回思うんですよ、『また試合か』って。プレッシャーに打ち勝つ、勝ち続けるって相当大変なことじゃないですか。だから本当に勝てて良かった。今は『ああ終わった、旨いもん食いてえな』って感じです(笑)」
3×3では、落合のように選手自らチーム創設や運営に携わるケースも間々ある。とはいえ、選手としての活動以外に多くの業務を抱えることが心身両面の負担となることには変わりないが、その引き換えに得られるものも少なくはない。そして、それが良いモチベーションを生むことにもつながる。
「選手だけやってるとわからないですが、オーナーになって予算組みもしてると、お金がどう作られてるかとか、新幹線代がいくらかかるのかが見えてくるわけですよ。スポンサーさんの顔も浮かんでくるし、応援してくれる人のためにより頑張ろうと思うのは、選手以外の仕事もしてるからというのが大きいです。もちろん、選手だけのときも感謝の気持ちはありましたが、例えばこのユニフォームのこのロゴの会社がどういう会社だとか、その会社の社長さんがどういう人だとか、そういうところを全部把握して、今日の試合に誰が来てくれるということもわかった上で試合すると全然違います。稼ぐのが大変な競技でもあるので、覚悟を持ってやらないといけないなって」
UTSUNOMIYA BREX.EXEとのファイナル、落合は最後の約3分を他の3選手に任せ、ベンチから試合を見守った。それまでの時間帯も落合は黒子に徹し、得点はほぼ他の3人が稼いでいた。それが、優勝のために落合が選択した戦略だった。表彰式ではデビン・ギリガンがプレーオフMVP、小澤凌がアサヒスーパードライスーパーショット賞、ヤン・デムサーがinゼリーENERGY賞を受賞。発表の際に落合が前に出てアピールするのは定番になっており、落合以外の選手が選ばれることを自身でも半ばネタにしている節があるが、今回表彰を受けた3人は、落合がいかに不可欠な存在であるかを力説する。