メンバーが様変わりした今季の名古屋ダイヤモンドドルフィンズの中で確かな存在感を発揮しているのが笹山貴哉だ。チームの先輩ガードである「石崎(巧)さんからいろいろアドバイスをもらえることが大きい」と本人は言うが、持ち前のシュート力でチームハイの得点をマークしたかと思えば、周りを生かす絶妙なパスを繰り出し、攻守で若いチームを牽引する姿からはリーダーとしての成長が感じられる。日本代表チームに初選出されたのは昨年秋の台湾遠征。若手主体のチームだったとはいえ、伸び盛りの23歳にとって得るものは大きかったはずだ。2度目の代表合宿となった今回はリーグの合間を縫っての短い期間。その分濃縮された練習メニューが続く。疲れがないと言えば嘘になるが、「この経験は必ず自分のステップアップにつながると思う」と、充実感あふれる笑顔を見せた。
――この2日間の代表合宿を振り返って感想を聞かせてください。
リーグの途中ということで体はきついですけど、去年の台湾遠征に続いて2回目の代表合宿ということで気持ちは充実しています。去年選んでいただいたときは若手メンバーが主体のチームでしたが、今回は本当の意味のフル代表ということで、実力がある先輩たちがたくさんいますし、そういうトップ選手と練習できるのはすごく新鮮な気分です。体がきついことより楽しい気持ちの方が強いですね。
――勉強になることも多いですか?
もうそれはいっぱいあります。中でも教えられたり、他の選手のプレーを見たりして『使い方』について学ぶことが多いです。スクリーンの使い方、ピックの使い方、人の使い方、その全部がポイントガードとしてすごく重要なことなので、自分のプラスになっているなあと思います。
――同じポイントガードでもホーム(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)と代表では役割が異なる点はありますか?
あります。特にオフェンスの部分ではすごく変わると思います。同じ点を取るにしてもドルフィンズでは自分が1回シュートを打って、まず見せてから2回目でパスとか、そういうことを考えながらプレーしていますが、ここ(代表チーム)ではそれをやらなくていい。ほんとに誰でも点を取れますから、自分が崩して、寄せてパスみたいな単純なことでいいわけです。その分1パターン早くポイントガードとして自分のアシストが多くなるかなと感じています。それに対してディフェンスはまだラリーとかやってなくてハーフコートだけなので正確には言えませんが、ハーフコートのディフェンスについてはあまり違いはないと思います。
――笹山選手は名古屋の中でも存在感を増している印象があります。
周りの評価はわかりませんが、自分がチームの中心になっているという意識は本当に強く持っています。周りの選手を生かすポジションでありながら自分も攻めなきゃいけない役割を担っていることで、チームの起点になるという思いはリーグが始まったころより確実に強くなりました。今はその積極的な気持ちが自分としてもいい方向に向かっているのではないかと思います。ただ、チームとしてはまだまだ成熟していない面がいくつもありますが。
――それはどういったところでしょう?
負けた試合を見るとわかるのですが、負け方がワンパターンなんです。ディフェンスがルーズになり、アグレッシブさがなくなり、最後は外国人選手頼りになる…これがいつもの負けパターンですね。負けたあとは必ず敗因を再確認して、ここはこうしなきゃいけない、これは修正しなくちゃいけないと話し合うんですが、また同じパターンを繰り返す。そこをどう改善していくかが僕たち若いチームの課題であり、チームを牽引する自分自身の課題であると思っています。
――その一方で若いチームの勢いというのも感じます。笹山選手自身は昨シーズンに比べて自分の成長を感じていますか?
ディフェンスについては良くなっているという手応えは感じています。(レジー)ゲーリーヘッドコーチからも言われるんですが、ポイントガードがディフェンスを頑張れば自然と周りも頑張らなきゃいけないという雰囲気になります。バスケットはまずディフェンスからというのも試合の中で実感しているので、意識して頑張るようになりました。その手応えは今すごく感じています。
――代表候補メンバーとして30人の中に残りました。そのことも1つの自信になりますか?
いえ、まだ30人の中に残っただけなので、それが自信になるとかはないですね。やはり最終メンバーに残らないと…。それを目標に頑張ります。自分はサイズもない(180cm)ですし、高さでは勝てないと思うことがよくあります。たとえばレイアップ1つにしても、左利きという利点もあって、前までは1テンポ早く打ってもブロックされなかったんですが、最近はどのチームもスカウティングしてきてチェックも早く来るようになりました。今はリズムだけでは難しくなってきたなと感じています。もう少し跳躍力あればなあと思いますね。もっと跳べたらなあって(笑)。でも、ないものねだりをしていてもしょうがないので、その壁を打開できるようにまたいろいろチャレンジしたいと思います。
――これからの自分の目標はなんでしょう?
自分の色を変えないで、自分の持ち味をしっかり出していくことです。たとえばドルフィンズならドルフィンズ、代表なら代表とチームが変わればそのチームの色に合わせなきゃいけないというのはあると思います。けど、その中でも自分の色は失いたくないというか、自分の持ち味、自分の色はちゃんと出していきたいという気持ちがあります。僕は点も取りに行きますが、それだけじゃなくてアシストも見てほしいと思うし、リーダーシップもしっかり取れるよう意識してプレーしているのでそこも見てほしい。そういう自分の色を代表チームでも出せたらいいなと思いますね。歳には関係なく、チームをまとめていく存在になることが目標です。
文・松原 貴実 写真・三上 太