文・松原 貴実 写真・吉田 宗彦
日本バスケットボール協会が国際大会停止処分を受けていたことから延期(当初の予定は5月)されていた第38回李相佰杯日韓学生バスケットボール競技大会が、12月11日~13日、青山学院大学青山キャンパスにおいて開催された。
日韓の学生代表が1年おきに、日本と韓国に場所を移して戦うこの大会は、3戦を行い2勝した方が優勝となる。1戦目に韓国、2戦目に日本が勝利し迎えた3戦目、韓国はスタートから攻守に隙のないバスケットを展開すると80-57で圧勝。「昨日(第2戦)のようにもっとアウトサイドから踏ん切りよく打って行くべきだったが、今日はチーム全体が消極的になってしまった」と池内 泰明HC。「ディフェンスはローテーションを含めよく機能していたと思う」と収獲面を挙げながらも「やはり、シュートは最初から思い切って打っていかないとだんだん打てなくなる。国際大会はなおのこと。プレスもできるし、追い上げる力は十分あるチームなのだから、最後の試合はもっと自信を持って大胆に戦う姿を見せたかった。それは今後の1つの課題になる」と結んだ。
一方の韓国チームは4年生の有望選手がすでにKBLでプレーしていることもあり、今大会は3年生以下のチーム構成となった。とはいえ、現在の3年生は韓国のゴールデンエイジと言われており、今回来日した#8チェ・ジュニョン(200cm・延世大学)、#12カン・サンジェ(200cm・高麗大学)、#14イ・ジョンヒョン(206cm・高麗大学)はA代表メンバーとして今年の第28回FIBA ASIA選手権大会(中国・長沙)にも出場している。韓国バスケットボールの次代を担う期待の選手たちだ。
#14イ・ジョンヒョン(高麗大3年)
#8チェ・ジュニョン(延世大3年)
ソ・デソンHCは日本チームの印象について「思っていたよりもずっと動きがよく、身体が大きなうちの選手にも負けずにぶつかってくる」と述べ、同時に自チームについて「韓国の選手たちは自分たちの方が身体が強く、身体能力も勝っていると思っているかもしれないが、そういう油断は禁物。メンタル面を注意し、もっと気を引き締めて戦いたいと思う」と語った。スタートから果敢に攻め、日本に傾きかける流れにも動じず、それをことごとく断ち切った第3戦は、まさに「気を引き締めて戦う」というデソンHCの言葉を実践するがごとく力強い韓国を見せつけた。
#13安藤 周人(青山学院大3年)
第2戦の勝利の立役者となった安藤は、この試合スリーポイント6本を含め28得点をマークした。
「初戦は緊張して少し消極的になってしまいましたが、広瀬(昌也/青山学院大監督)さんから『もっと思い切って打っていけ』とアドバイスされたこともあって、チャンスが来たら打つことしか考えずに行けたのがよかったと思います。韓国の選手は身体も大きく、いつもどおりにシュートを打ってもブロックされるし、いろんな意味で普段よりコートが狭く感じます。そういう感覚を肌で感じられたこともいい経験になりました」
#6馬場 雄大(筑波大2年)
馬場が走るとにわかにチームが活気づく。第2戦では3本のダンクシュートで場内を沸かせた。
「韓国チームにはA代表に選ばれている選手が3人いて、それぞれ学生とは思えない力を発揮していることは知っていましたが、今回対戦して、身体の大きさだけではなく、シュートの精度の高さにも驚きました。特に#12サンジェ選手はすごかったです。韓国を倒すためにはまずディフェンスを頑張ること、リバウンドやルーズボールで手を抜かないこと、個人的には走るチャンスがあったら思い切って走って、コート全部を使ったプレーができるよう心掛けましたが、まだまだ力不足です。この(日本)チームはとても雰囲気がよくていいチームでした。敵に回したら嫌な選手ばかりだけど、一緒にやるとすごく楽しかったです」
#0ベンドラメ礼生(東海大4年)
3連戦のハードな日程の中、第2戦、第3戦ともに35分を越えるプレータイムで日本チームを牽引した。印象深いのは第2戦の最後の場面。同点で迎えた残り3秒、ゴール下の#17杉浦 佑成(筑波大2年)に繰り出したナイスパスだ。その1本が日本に勝利を呼び込んだ。
「この3連戦はとても勉強になりました。韓国の選手は大きい選手であってもパスの技術もシュートの正確性も高い。日本が対抗するためには数少ないシュートチャンスを活かしきることが大事だと痛感しましたが、今日(第3戦)は僕も含めシュートの確率が悪く、それが敗因の1つだったと思います。韓国はもちろん、世界と戦うにはシュートの精度をもっと上げていくことは不可欠です。それプラス走力、それは今後の僕自身の課題でもあります」
#12カン・サンジェ(高麗大3年)
今回来日したA代表トリオの中でもひときわめざましい活躍を見せたのがカン・サンジェだ。幅のある200cmの身体でゴール下を支配したかと思うと、精度の高いアウトサイドシュートを次々に沈め、第1戦で25得点11R、第2戦で31得点14Rをマーク。日本が77-74と前に出た第2戦では、残り19秒に同点の3Pを決めて場内を揺るがした。「あの場面で冷静に3Pを決めてくる力はすごい。自分のシュート力に自信を持っている選手の余裕のようなものを感じました」(ベンドラメ礼生)
それもそのはず、彼はもともとシューターであり、4番ポジションを目指すため身体づくりを始めたのは大学2年から。実に約15kg体重を増やしたのだという。「3番ポジションだった高校時代も他に長身選手がいなかったため監督さんからインサイドのプレーも教わっていたので、そのことが今、役立っていると思う」
ゲームでは身体を張って激しくやり合い、感情の高ぶりからテクニカルファウルを取られる場面もあったが、一歩コートを離れれば清々しい笑顔が印象的な好青年だ。「高さでは韓国が勝っているが、スピードとテクニックでは日本が上。そこから僕たちが学ぶことは多い」と謙虚に語る言葉は、今後さらに手強い存在になりそうなサンジェを予感させた。
第38回 李相佰杯日韓学生バスケットボール競技大会
@青山学院大学 青山キャンパス
試合結果
12月11日(第1戦) 日本69-81韓国
12月12日(第2戦) 日本79-77韓国
12月13日(第3戦) 日本57-80韓国
全日本大学バスケットボール連盟オフィシャルサイト ⇒ http://www.jubf.jp/