「第26回FIBAアジア女子バスケットボール選手権大会(以下、アジア選手権)」は予選リーグを終え、女子日本代表(以下、日本)が5連勝で1位通過を決めた。2年前のアジア選手権で43年ぶりにアジアを制した日本だが、だからといって今大会も絶対的な力の差があるかといえば、けっしてそうではない。
2年前は世代交代がかみ合わず3位に終わった中国だが、昨年の世界選手権では6位に入賞している(日本は予選ラウンド敗退)。韓国も世代交代がうまくいっていないとはいえ、予選リーグの戦いぶりを見るかぎり、コンビネーションプレイと外角からのシュート力はアジアでも随一と言っていい。長らく4強の一角を占め、しかしながら8月の国際強化試合でチーム作りの遅さを露呈したチャイニーズタイペイさえも、日本戦ではしっかりと対策を講じてくるあたり、その目はまだ死んでいない。
一方の日本はまだまだ発展途上にあることを露呈した。特にオフェンスの柱の1つである3ポイントシュートの確率が上がってこない。逆転勝利に沸いた中国戦さえも3ポイントは1本しか決まっていない(14本試投)。韓国戦も2本(13本試投)、チャイニーズタイペイ戦も4本(16本試投)と低迷している。若さなのか、コートの感覚を掴めていないのか、ベテランの三谷藍も不調の原因が「わからない」と言う。
また中国戦で復調はしてきたものの、渡嘉敷来夢は周りの選手とのコンビネーションがもうひとつしっくりきていないし、その対角である間宮佑圭も、本来のリズムをつかみきれていない。
それでも勝ち切れているのは、要因の一つとしてバックアップメンバーの充実がある。控えの選手がそれぞれの役割を徹することで、悪い空気を蔓延させず、チームとしてしっかりと我慢できているのだ。この意味は大きい。たとえば大会の途中から渡嘉敷のバックアップに回った髙田真希。シューターの栗原三佳の調子が上がらないことで、バックアップからスタメンに抜擢された山本千夏。篠崎澪も持ち前の脚力を生かしたディフェンスと前に走る機動力で、ゲームの途中からチームの流れを加速させている。
大会が始まる前、高田はこんなことを言っていた。
「海外のチームを相手に40分間を5人で戦い抜くことは厳しい。アジア選手権は予選が5連戦になるのでなおさらです。もちろん相手によって違うとも思うけど、それでも40分間出続けることはすごく大変なので、出る時間をシェアしなければいけません。つまり選手個々がシェアできるだけの力量を持っていないとチーム力が上がってこないわけです。コートに立つ選手がバックアップの存在に安心して、出場している時間だけを集中できるチーム力。それは自分がバックアップに回ってもそうだし、ほかのポジションの控えも同じだと思います。そのために練習してきているわけですから。もちろん個人としてはスタメンの座を狙っていきますけど、チームが一丸になるというのは、スタートだけではないんです。ゲームをシェアできるだけの力量を持たないと、この場にはいられません」
最終的な起用はヘッドコーチの判断に委ねるだけだが、少なくともアジア選手権の予選リーグを見るかぎり、好不調の波はあるにせよ、日本のバックアップにアジアのライバルたちとの実力的な差は感じられない。
大会への慣れ――特に今年はオリンピックの出場権がかかった大会だけに、気持ちの保ち方は経験が必要だが、それも予選リーグの5試合を通じて、少しずつ上向いている。
「バックアップはあとから試合に出ていく分、そのときのゲーム状況もベンチから見てわかっているので、自分たちが何をしなければいけないかわかっています。みんながそれぞれの役割を持って、ゲームに入れていると思います」
苦戦を強いられたチャイニーズタイペイ戦のあとでも、高田は一定の手応えを感じていた。
予選リーグ最終日のタイ戦こそ、そのバックアップメンバーが機能せず、ミスの連鎖が止まらなかったが、連戦のなかで、格下相手にそうした内容のゲームは出てくるもの。反省と修正は必要だが、下を向くときではない。いかに準決勝以降に照準を当て、切り替えることができるか。たった1つの枠をチームで争うオリンピック予選とはそういうものだ。
「勢い」をテーマに掲げる今年の日本にとって、バックアップの存在は準決勝以降、その重要性がさらに増してくる。スタメンもさることながら、バックアップにとっての本当の戦いはここから始まる。
【大会概要】
大会名:第26回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会
(兼 2016年リオデジャネイロオリンピック アジア地区予選)
期 日:2015(H27)年8月29日(土)~9月5日(土)
開催地:中国・武漢
会 場:武漢スポーツセンター
大会特設サイト http://fac_women2015.japanbasketball.jp/
大会公式サイト http://www.fiba.com/asiawomen/2015