ニック・ファジーカスの引退や新指揮官招聘により、転換期に突入した昨シーズンの川崎ブレイブサンダース。中地区最下位という、Bリーグ以降では最も厳しい結果に終わり、今シーズンは逆襲を期して臨むことになる。就任2シーズン目のネノ・ギンズブルグヘッドコーチの戦略がいかに浸透するかという点と同時に、特別指定選手を除いても7人を数える新戦力の働きもカギとなることは間違いない。
京都ハンナリーズから移籍してきた水野幹太は、2019-20シーズンにも特別指定選手として川崎の一員となっているが、リーグ制覇も狙える位置につけていた当時とはチームの状況が全く異なる。そのことは本人もよく理解している中、現時点では個人としてのパフォーマンスに満足しておらず、ベルテックス静岡をホームに迎えた9月14日のプレシーズンゲームは2得点というスタッツに終わっている。
ただ、「ディフェンスからという意識が常にあって、それで試合にどう乗っていけるかというのも自分の中でできる」と自身に課した役割は明確だ。オフェンスに関しては「自分の打てるシュートを打っていこうという、ある意味軽い気持ち」で向き合い、「試合だとシンプルな考えでバスケできてるので、まだまだ足りないとは思うんですけど、打つところは打つというのもできてると思います」と感触は決して悪くない。
川崎に再び必要とされたのも、ディフェンスに対する評価によるものだ。昨シーズンの川崎は失点数がリーグで2番目に多かったことから、「ディフェンスが崩れやすかったというのは北(卓也)GMも言ってましたし、だからディフェンスができる選手を入れたということも言っていただいたので、ディフェンスを意識してやってきた選手として、その姿勢は崩したくない」とチーム立て直しへの貢献を誓う。
この静岡戦ではポイントガードの役割も担った水野にとって、篠山竜青はやはり格好の手本。「このチームにはいつか戻ってきたいと思ってましたし、竜青さんがいるのは大きかった」と、その背中からあらゆるものを吸収しようとしている。
「バスケ全体を見るIQがすごく高いですし、リーダーシップが必要なときに竜青さんがいると安心するというのが、自分の中でもあります。この前もちょっと伸び悩んでるときに質問してみたら、『俺にはこう見えるよ』って言われたことにすごく納得して、そのアドバイスを意識してみたら上手くいったんです。もちろん負けたくないし、超えていきたい選手ですし、そこを超えたらもっといろんな世界、知らないバスケを見られるんじゃないかと思ってます」
前述の通り、川崎は前回在籍時とは異なり、リビルドの真っ只中。しかしながら、3シーズンを過ごした京都も、移籍した当初はチームを再構築しようとしているところだった。その経験は少なからず生かされるはずだ。
「京都のときもチームの体制が変わったところに入ったので、苦戦もしたんですけど、Bリーグで大事なのはディフェンスで、そこはこのチームの中でトップにいたいです。常に相手に圧力をかけるとか、こいつがいたらディフェンスが良くなるというのを目指していきたいですし、そこが一番貢献できるところで、自分が出せるものが絶対にあると思うので、ディフェンスからというチームの土台ができて、そこからオフェンスにもプラスの影響が出るようにしていきたいです。かみ合えば本当にチャンスがあるチームだと思ってます」